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僕たちの答え 2
「あ、そうだ……これ、僕と先輩から」
そう言って雪哉が差し出してきたのは、綺麗にラッピングされた細長い箱だった。開けてみろと促され包みを開けると出てきたのはブランドものに疎い和樹でも知ってるような銘柄の時計だった。
「えっ! ちょっ、こんな高いの貰えないって……」
「いいから貰っとけ。ガキどもになめられないようにちゃんとしたモン身につけとかないとな」
そう言って橘から乱暴に頭を撫でられ、胸の奥からじわっと暖かいものが込み上げてくる。
「和樹、大丈夫だよ。雪哉も橘先輩も今年の春から同じ実業団に行くことが決まってるんだし。くれるってもんは貰っとかなきゃ。将来プレミアつくかもだし?」
横で聞いていた拓海が茶々をいれると、和樹はフッと表情を崩した。
「そっか……二人とも有名企業からの内定もらってたんだっけ……」
インカレでの華々しい活躍が認められ、先に橘が就職していた所に雪哉が転がり込む形で内定をもぎ取ったと聞いた時には驚いた。
雪哉は元々バスケに関しては天才的なセンスを持っていたし、引くて数多だったはずだ。ちゃんとしたプロのチームからのオファが来ていたという噂も耳にしたことがある。
それでも、橘と一緒に就職するという道を迷わず選んだ親友は本当にすごい。
「たく、せっかくプロになれるチャンスだったってのにコイツ頑固でさ。全然俺の話なんて聞きゃしねぇんだ……」
「そんなの当たり前でしょう? 僕は貴方と同じチームじゃなきゃ嫌だって何度言ったらわかるんですか」
「うっせぇ! いちいち恥ずかしいこと言ってんじゃねェよ馬鹿!」
突然痴話げんかを始める二人の姿を見て、和樹は思わず口元が緩む。
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