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第13話
※視点なし
彼の名はロミオ、城の騎士の一人だった。
子供の頃両親に捨てられ孤児院で育てられた。
だからか誰かに愛された記憶がなく、愛に飢えていた。
誰かに必要とされる騎士団に入ったのも、誰かを守れば見返りに愛されると思っていた。
ロミオはあまり戦うのが得意ではなかったが頭が切れて策士だったから影ながら騎士団を支えて騎士団メンバー達に一目置かれていた。
そんな彼にも好きな人がいた。
あまり体力がなく重い荷物を運んでいる時、いつも一緒に運んでくれて…周りにもよく気が付き騎士団ではないのに軽い仕事を手伝っていて騎士の間では人気者だった。
ロミオにとって、雲の上の存在だった。
ある日、ロミオにある人の世話係をハイドから指名され初めての単独任務に嬉しくなった。
やっと認めてもらえた、そう思った。
そしてロミオは彼…瞬の世話係になった。
異国から来たのか字の勉強をしていて、身の回りの事は自分で何でもやろうとしていて正直世話係なんていらないと思っていた。
でも瞬を拾ったからかハイドがとても瞬を気にしていて、最近物騒だからとロミオに頼んだ。
ロミオは健気で純粋な瞬に惹かれていて一つ返事で頷いた。
瞬に近付く騎士達を邪魔な存在だと思っていた、それは騎士団長のハイドでさえも…
一生あの暗く狭い部屋に閉じ込めて自分のものにしたい。
あの人の笑顔は自分だけのもの。
瞬を見るたびに欲深くなっていった。
それは愛を知らないロミオを酷く歪んだ形に進化していった。
…しかしロミオの恋はすぐに玉砕した。
ある日瞬の部屋に行き、ロミオは偶然目撃した。
瞬とハイドが口付けている場面を…
瞬はロミオが見た事ない顔をしていた。
目は潤み、頬を赤く染めハイドだけを見つめていた。
腕はハイドの首に回しハイドは腰を抱いていた。
ハイドはロミオが部屋に来た事に気付きドアの前を見た。
瞬も気付き、さらに頬を赤くして恥ずかしそうに俯く。
お互い目の前の相手に夢中で気付くのが遅れたようだった。
ロミオは頭がパニックになった。
知らない知らない、こんな瞬は知らない…まさか、ハイドに脅されて無理矢理されたんじゃ…
そう思うと自分の考えが正しいように感じた。
そうだ、そうに違いない…だって瞬は自分のものなのだから…
ロミオはハイドに掴みかかった。
瞬を助けるため、この男は邪魔だと本能が言っている。
戦うのが苦手だが、頭に血が上り何も周りが見えていなくてハイドを殴るために拳をハイドの頬目掛けて殴りつけた。
ハイドは騎士団長であり、国の英雄だ…喧嘩慣れしてないロミオの拳なんて簡単に避けれるだろう。
しかしハイドが避ける前に拳が当たった。
口が切れたのかポタポタと床に赤いシミを作る。
ロミオの目の前には瞬がいた、手で口を拭う。
…ロミオは、大切な人を傷付けた。
何故その男を庇うのか、理解出来ず自分が傷付いているのにハイドを心配している瞬を呆然と見る。
そして瞬はロミオまで心配して声を掛けていて瞬を殴った手が震えた。
こんな筈じゃなかった、こんな筈じゃ…
ハイドは瞬に自分の軍服のマントを被せて前を見えなくしてから思いっきりロミオをぶん殴った。
足が床から離れて吹っ飛び壁に叩きつけられた。
ハイドも大切な相手を殴られて頭にきていた。
もう一度殴ろうと襟を掴み首を絞める。
その時、遊びにきたリチャードが止めに入りロミオは死なずに済んだ。
何故こんな事をしたのかリチャードが聞いてもロミオはまともに話せる状態ではなく、妄想に囚われていると感じた。
ハイドと瞬に聞いても何故こんな事をしたのか理由が分からなかった。
それからロミオはハイドを恨むようになり、瞬の世話係を辞めさせた後更生させようと下っ端からやらせていたが隙あらばハイドを狙い、仲間に背中を預ける事も出来なくなりやがて騎士団を追い出されるようになった。
あれから直接瞬に会う事はなかった。
彼はバレないようにずっと影からこっそりと瞬を見つめていた。
瞬への愛は増し、ハイドへの憎しみはどんどん溜まっていった。
そして瞬の死を知り、ハイドが瞬を殺したと思い込み今も殺したいほど恨んでいた。
自分と一緒にいれば彼は死なずに済んだのに…
あの時、無理矢理にでも連れ出していれば…行動しなかった自分を責めた。
そしてある日ロミオは不思議な夢を見た。
悪魔の囁きだった。
…瞬が生まれ変わり自分に会いにきたのだと…
今度こそハイドから救ってほしい。
ショコラ・フロマージュという店で待つ。
夢から覚めて、ロミオは決意した。
あの時は失敗したが、ちゃんと計画して今度こそ動こう。
瞬がまたハイドに攫われないように閉じ込めて守ろう…と…
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