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第14話

※ハイド視点 俺は机に向かいとある雑誌を真剣に読んでいた。 音も聞こえないほど集中していた。 パラパラと捲ると後ろから影が重なりページが見づらくなった。 さすがに邪魔されたら、嫌でも気付く。 この部屋に来るのは一人だけだと分かり、後ろを振り返らず拳を上に上げて顎を殴りつけた。 不意打ちで避けられなかった男は痛みに顔を歪めていたが無視して再びページを捲る。 「酷い、残虐非道の鬼畜騎士団長だ!」 「……」 「ハイドってそういうのに興味あったのか?」 長年の腐れ縁幼馴染みだからかリチャードはすぐに気にせず話題を変えてこちらに懲りずにやってくる。 また殴ろうかと拳を握ると影が重ならないように少し離れた場所で俺の見る雑誌を見た。 何故今まで興味のなかったその雑誌を見てるのか気になり俺が真剣に見るページに気付き眉を寄せた。 俺が見ていたのはマニア向けの心霊雑誌だ。 そして、そのページには遠い国の霊媒師の特集が書かれていた。 …俺が霊媒師に頼るのはこれが初めてではない。 ただ、一言でもいいから瞬と話したかったのだろう。 でも、何人もの霊媒師を頼ったが全てインチキ霊媒師だった。 本物か確かめるために前情報は名前と俺との関係だけを伝えた。 霊媒師達は病気や事故で死んだと勝手に思い込み…最悪な場合瞬を女だと勘違いしている奴もいた。 当たり障りない日常会話を殺された人間が言うわけない。 いつも見守っているなんて、俺は一番聞きたくなかった。 …俺には瞬が側にいない事はすぐに分かっていた。 それほどまでに想いが強い。 けど、もしかしたら一人くらい本物がいるのではないかと探していた。 リチャードはこの部屋に来た用事も忘れ俺を見る。 「…その霊媒師、本物なのか?」 「さぁな、でも…瞬に会える方法があるなら全て試す」 「瞬様が会いたくないなら?」 ずっと瞬に会うために俺がいろいろしてきた事を知っているリチャードは呆れを通り越して感心している。 そんなに想われている瞬が少し羨ましく感じた。 想われるほど本気の相手と付き合わないリチャードが悪いといえばそうだが… あまりにも必死な幼馴染みに対して少し悪戯がしてみたくて言ったら俺はパタンと雑誌を閉じた。 そして明らかに落ち込んだ顔をしていた。 まさか無表情の騎士の氷を一人の青年の名前を出しただけで溶けてしまうとは思わずリチャードも驚いていた。 「…会いたくないなら会いたくないと一言言ってほしい」 「わ、悪かったよ」 「霊媒師は南の大陸のヴァイデル国にいる」 南の大陸と言ったら砂漠だ。 ハーレー国が近く戦争した場所でもある。 足場は悪いわ暑いわで地獄のようだった記憶しかない、それが暑さに強いハーレー国の作戦だったのだろう。 まさか足止めされる事なく馬を使いこなし涼しげに戦う英雄様がいるなんて誰も思わなかっただろう。 そしてヴァイデル国と聞き霊媒師に心当たりがあった。 …そういえば瞬の死で放ったらかしだったなと思い出した。 「お前、ミゼラ様に会いに行くのか?」 「…あぁ」 ミゼラ・ヴァイデルという名の女性が南の大陸の小国にいる。 名の通り王族の血が通うが、本人は御霊(みたま)送りをする巫女…つまり霊媒師だ。 姉が三人もいるから末っ子のミゼラは継がないと聞いて、ならばと俺の両親が勝手に決めた婚約者。 実は瞬が死んだあの日、俺はヴァイデル国には行っていない。 行く途中の馬車の中で瞬の死を知り急いでイズレイン国に戻った。 だから、婚約はそのままずっと放置されていた。 俺は霊媒のついでに婚約破棄を伝えるためにヴァイデル国に行こうと言ってるようだ。 第一は瞬に会う事でその他はついでなのかとリチャードは呆れた。 …でも俺らしいと言ったららしいと苦笑いした。 「まぁなんだ、頑張ってこいよ」 「…それより、お前…なにか用があったんじゃないのか?」 瞬の時のようになにかあっては困るからリチャードは国に残る事にした。 そしてやっとリチャードは何しに来たのか思い出し、俺にとあるものを見せた。 それは巡回中の騎士が証拠に撮った写真だと言う。 そこにはとんでもない光景が写し出されていた。 俺は言葉を失い怒りで唇が震えた。 リチャードも同じ気持ちで空いた手は固く握られ、写真を机の上に置く。 「…なんだ、これは」 「今朝撮れた写真みたいで現像にちょっと時間掛かったんだよ…まだ写真というものは数少ないからな、異国の土産に買ってきていたコイツにボーナスあげたいくらいだよ」 撮影者にそう言うが声は震えていた。 写真には酷い光景が写っていた。 そして、写真に写る人物に殺意が湧いた。 きっと写真に写る人物を知らなくても誰でも胸糞悪い光景だろう。 そして一番関係あるであろう俺が黙って見ているわけない。 立ち上がりすぐに部屋を出ようとしたがリチャードに腕を掴まれ止められすぐに腕を振り払った。 「待てよ、お前…また無茶して死のうとか思ってないだろうな」 「…許さない、絶対に」 俺は全く聞いていないのかブツブツと恨みを込めて呟き部屋を出た。 この事を知らせるのは事件が解決してからが良かったかと思うが、それだと俺の怒りが自分に向きそうだったから我が身可愛さに今言った。 誰もいなくなった部屋で再び写真を見て虫唾が走った。 リチャードも見つけたらタダじゃおかないと思いながら俺の後を追う。 リチャードにとって弟のような存在であり、俺の大切な恋人が眠る墓。 …それが荒らされた写真を見て平常心でいられる人間はいるのだろうか。 きっと荒らした写真に写る男は生きていられないだろう。 俺の大切な人を汚した罪を償うには当然の事だろう。 城にいる騎士を数十人集めた。 俺は人脈もあるからそれほど手間はかからなかった。 城を守る騎士も残しておく必要があるから数十人にした。 「すまないな、急に呼び出して…もう知ってる者もいると思うが何者かが城の敷地内に潜入して瞬……俺の大切な人の墓を掘り起こした」 ザワザワと揺れる。 城の敷地内に潜入でも大罪なのにそれだけではなかった。 この場にいる者は全員ではないが瞬を知ってる者が多くいた。 大切な仲間を無理矢理眠りから覚まされたのだ。 怒らない方がどうかしている。 そして俺は知らなかった… これから先にどんな運命が待つのかを…

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