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第21話
※?視点
街をいつものように歩いていて、ふと頭が痛くなり人気のない路地裏に急いで向かう。
バクバクする心臓を落ち着かせながら何処かの店の壁に寄りかかる。
苦しい痛い…右目がなにか訴えてるような気がした。
子供の頃から左右の目の色が違い、周りの同じ歳の子供には気味悪がり近付いてくる人はアイツだけだった。
本人もこんな目に生まれたかったわけじゃないのにと悲しい気持ちになって。
唯一、幼馴染みだけが理解してくれて一緒にいてくれた事が支えだった。
左目は真っ赤なのに右は真っ青な瞳で歪だった。
それでなんかの力が目覚めるとかそんな話ではなく…ただ、青い瞳を見ると我を忘れそうになる。
だから普段は特注のカラコンを着けていてイズレイン帝国に越して来た日からこの秘密は幼馴染みしか知らない。
イノリさんも知らない秘密…一番嫌われたくない相手だから自分から明かす事は絶対しない。
青い瞳を隠す眼帯を外すと、気持ちがスッと楽になる。
…その目を隠すなと誰かに言われているようだ。
同時に頭痛もスッとなくなり、少し呼吸を整える。
不思議と、さっきまでの記憶が薄れてきて…何も分からなくなる。
きっとこれは、罰なのだろう…愛する者を守れなかった自分への…
カツカツと足音が聞こえて眼帯をズボンのポケットに雑に入れる。
少々乱れてしまった髪を適当に手で整えると立ち上がった。
「こんなところにいたのか、探したぞ…ハイド」
「…悪い、抜け出して」
何処かの店の窓に写る俺は疲れたような顔をしていた。
口の中が少し甘い味が広がっていて気分が悪くなった。
リチャードは俺と非番が重なり、瞬の墓参りに行く途中だった。
墓に戻された瞬がちゃんと元通りか心配だったからでもある。
そして、瞬が死んだあの場所を通った時俺の意識がなくなった。
一緒にいたリチャードは俺になにがあったのか分かっているだろうが、きっと何も言わない。
何度か同じ状況になった時もリチャードは誤魔化して何も言わなかった。
だから俺も自分の事なのに興味がなくなり、いつしか聞くのをやめた。
リチャードが俺のポケットからはみ出した眼帯を見て複雑な顔をしていた事に俺は気付かなかった。
瞬の墓参りに行こうとする俺をリチャードが腕を掴み止める。
「墓参りなら俺が行く、お前は帰って休め」
「…そうはいかない、少しの間留守にするから瞬にも報告したい」
「留守って…お前また敵国に」
「霊媒師に会うだけだ」
リチャードはまた俺が一人で敵国に乗り込む気かと焦った顔をしたが、俺の言葉にホッとして腕を離す。
ヴァイデル国は少し遠く、往復だけで3日も掛かる。
霊媒にも何日掛かるか分からないから俺は長期休暇をもらっていた。
カーニバルまでには帰ってくるつもりだったが、1日は遅れる気がした。
近くに敵国のハーレー国があるが、恋人に会いに行くのに返り血を浴びる事はないだろうとそこは安心している…その後は知らないが…
一週間もカーニバルをやってるから1日くらいどうってことないとリチャードは思うが、ハイドが心配だった。
今までもそうだったが、瞬と会えなかった時のハイドの落ち込みようは酷いものでリチャードはもうあんなハイドは見たくなかった。
「ハイド、どんな結果になっても気を落とす事はないぞ」
「…分かってる、そうなったら次の方法を探す」
死んだ人間をずっと想い続けてハイドは幸せになれるのだろうかとリチャードは疑問だった。
だからハイドに美人や瞬みたいなのがタイプなのかと普通顔の人を何人か紹介してるが、全く興味がないのか指先一つ動かさず無関心だった。
…瞬には悪いが、ハイドには新しい恋をしてほしかった。
帝国一の英雄の人生を死人探しで無駄にさせたくない。
最初は霊媒で一度瞬に会えれば諦めるだろうと思っていたが、ハイドの欲求が増すのではと複雑な気持ちになっていた。
もし、瞬と一緒にいたいから死ぬとか言い出したら…
リチャードは自分よりハイドが幸せなら何でもいいと思っているから考えたくなかった。
「ハイド、俺はお前に幸せになってほしいと思ってる…だからお前が悲しむ顔は見たくない」
「お前は俺が不幸に見えるのか?」
見えないよ、愛する人を想うハイドはとても幸せそうに見える。
…けど、死んでる人間は生きてる人間を幸せになんて出来ない。
親友としてリチャードに出来る事は、新しい恋をするために背中を押す事だ。
瞬もハイドも大好きだから二人が結ばれるのが一番良かったのにといろんな感情が混ざりながらハイドと共に墓参りに向かう。
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