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第3話

「えー、家に帰ったり、バイトだったり、色々あって、もうすぐ2月ですが、これから2022年度23 Futures・新年会を始めます」  五島がシェアハウスに帰ると、既に鍋の用意と炬燵の用意が整っていて、五島は乾杯の音頭をとる。  九岡に六川、それに、暗めの金髪にいつもかっこいい系の作業服を着ている男・三浦が各々、好きな飲みものをグラスに入れて乾杯する。  ちなみに、ここでも、三浦は五島とは違う銘柄のビールを注いでいて、いかに自分が愛飲するビールの方が素晴らしいかを力説する。 「だから、てめーは分かってない。ビールは苦い方が良いに決まってる」 「お前こそ分かってないね。確かに、味が濃いものは良いけど、料理全般に合うのはこっちのビールだ」 「本当に平和だね」  六川は三浦と五島の言い合いに対して朗らかに笑うと、ビール……ではなく、ジンジャーエールを飲みながら、彼らを見つめる。 「ああ、そうだな……もうサンもゴーも適当に鍋をつけたからさっさと食べなよ」  少し九岡寄りに置かれたコンロ。それに、袖がダボっとしたチュニックシャツを着ている六川。既に、食材に極力、偏りがないように六川の器に盛った九岡は三浦にも五島にも鍋を入れる。  ちなみに、肉が好きな三浦には肉と三浦がやや苦手な春菊を、魚介類が好きな五島にはカニと五島がやや苦手なしらたきを入れる。 「……すまん」 「……すみません」  九岡は基本的に人の好き嫌いに敏感な男だが、三浦と五島に関しては例外的にこういうことをする人間だった。 「みんな、仲、良いんだね」  と、六川がジンジャーエールを傾ける。  実は、六川以外……九岡も含めて、三浦、五島は同じ中学の同級生だった。九岡は推薦入学で黄麦学園に入ったが、三浦と五島はどちらかが譲れば良いのに、実家から程近い同じ高校に入ったらしい。 「いや、仲は最悪だね」 「と言うと?」 「いや、丁度、帰省した時にサンとゴーの学校の文化祭、行ったんだけど、ゴーが牛串を焼いて、サンがたこ焼きを焼いて売ってたんだ。そしたら、案の定、俺が焼いた方が断然上手いって話になるわ、どっちが多く売れるかとかめちゃくちゃだったな」 「いやー、俺も若かったからさ」 「そうそう。高校生だったからね」  三浦と五島は珍しく口を揃えて、話を切り上げる。余程、知られたくないことでもあるのか。  その後は鍋の〆を「麺」にするか、「ご飯」にするかでちょっと揉めたぐらいで九岡、六川、三浦、それに五島は最後の最後まで鍋を堪能すると、コタツの上の鍋やコンロを片づけた。

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