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第7話
「握手って……てっきりもっとえげつないことかと思ったわ」
「えげつないって?」
三浦の軽口に、六川が返す。
「例えば、誰々に10万払うとか、暴露話とか?」
確かに三浦の言うように、他の双六でも恥ずかしい暴露話をしなければならないとかはあるように思う。
だが、プレートに書いてあったことが本当だとすると、暴露話をしなかった場合は最悪、死ぬことになるかも知れないのだ。
「へぇ、そういうのもあるんだね。あ、次は僕か」
六川は九岡の投げたダイスを拾い上げると、先程、九岡が投げたのと同じように投げる。賽の目は2。
「2か……置いていかれなきゃ良いけど。えーと、『黄色のコマを持つ者にだけ今、思いを寄せる者の名前を告げよ』……」
大っぴらにしないまでも、三浦に今、六川が好きだと思う人を言わないといけないらしい。
「何か、いきなり暴露話がきたね」
六川は照れると、三浦が「話してみよ」と戯ける。
「……」
五島は何だかやるせない気持ちになると、三浦と六川から目を背ける。
物心ついた頃からのことだが、三浦が辛辣な物言いや茶化したよう素振りをするのは五島だけだった。六川や九岡には勿論、五島は少し前に初詣の参拝客の案内のアルバイトをしていた三浦を見かけたのだが、子どもお年寄り、男女を問わず、思いやりがある言動をしていた。
「(別に、六川や九岡、他の人みたいに接して欲しいなんて言う訳じゃない。今更って感じもするし、自分に優しく接する三浦なんて気持ち悪すぎる。でも……)」
自分の何がそんなに気に入らないんだ、と五島はいつも思っていた。
五島と九岡には聞こえないように、三浦の傍まで行き、耳元で話す六川。
すると、少し驚いたような表情になるが、六川に礼を言った。
「教えてくれてありがとう。いつか良い関係になると良いな」
「こちらこそありがとう。君も好きな人がいれば良い関係になりますように」
「……」
六川と三浦もコマの指示に従うと、次は五島の番だった。
「ゴー?」
「あ、あぁ。次は俺の番だったよね。すぐ振る」
五島は九岡に促されると、三浦に何か言われる前に6面のダイスを振った。五島の次が三浦、また九岡、六川……と振り続けていく。
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