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第8話(R15)
「あと7コマ前後というところか……」
1番目にダイスを振り出した九岡はあと9マスで、2番目に振り出した六川はあと8マス。そして、3番目に振り出した五島はあと5マスで、4番目に振り出した三浦はあと6マス。
もしかしたら、あと1振りでゴールできるかも知れないという状況から五島には余裕があった。
「5マスピッタリで1位だ!」
五島は先程、九岡に声をかけられるまで呆けていた気恥ずかしさを紛らわすように明るく言う。
双六のルールでは上がりのマスにピッタリ止まらなければ、超過分だけ戻るか、超過した部分があっても、そのまま上がれるの2種類あるが、五島は超過分だけ戻る派だ。
「おぅ、そのまま上がれるなんて緩いのはなしだ」
珍しく五島に言い分に、三浦も同意する。
双六の作り手が意地が悪ければ、高確率で最後になればなるほど、◯回休みやら振り出しに戻るマスの可能性は高くなる。
泣いても、喚いても、いつか誰がゴールし、着順が決まるまでそれは続く。
「くっ、くっ、くっ。お前は4マスで、俺は6マスを出して、俺が1位でエンド。今年も1位は貰ったな」
三浦の言うような状況もない訳ではない。
だが、2人とも1や2ばかり出たり、出目が超過したら、九岡や六川にも1位上がりの可能性がある。
「ふん、何とでも言え。5、5、5……」
五島はダイスを転がすと、ダイスは勢いがつき過ぎて、何回転もする。回転し、回転した結果、
「あぁ……」
透明な氷のようなダイスは目が3つあり、五島は落胆したように声を出した。
超過した訳ではないが、これで、三浦の言う通り、6が出れば、負けてしまう。
「残念だったなぁ、五島くん? さぁ、さっさと指示に従って、俺の番だ」
挑発たっぷりの言葉に、五島は頭に血が上ったようになる。だが、三浦が次に6を出せるかは6分の1だ。
五島は一度、冷静になると、コマの指示を見ることにした。心配そうに見る九岡や六川の視線にも気づかない。そればかりか、さっきまで煽っていた三浦の表情にも気づかず……
「えっ……」
そこには五島の予想を上回ることが書かれていた。
「『黄色のコマを持つ者の手で……絶頂せよ』」
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