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魔女のリッシュさん
さっきの大通りとは反対の方向へ歩いて、住宅街の方へ来た。ときどき、露店があって、見慣れない食べ物が並んでいる。
気になってキョロキョロしていると、早く来いって腕を引かれた。
更に歩いて、家が少なくなってくると、途中にある細い道を通った。少し長いその道を通り抜けると、ポカンと広いスペースがあって、そこに一つだけ露店があった。
「ここ?」
「ああ」
店に近づくと、ギチギチに傷んだ白髪の老婆が居た。鼻が高くて目は澄んだ水色。昔はさぞ美人だったんだろうなと思う。
「おいババア」
「あ?」
え、ババアって言った?絶対そんなこと言っちゃダメだよ。
カイが声をかけると、大きく黒い鍋で緑色の液体をグツグツ混ぜていた老婆はゆっくりと顔を上げた。
「なんのようじゃ」
「複製できんだろ」
「まぁた肉か」
「ちげぇし」
ふんっ、と拗ねたように顔を背けた。
「コイツのだよ」
「ほぉ?」
「あ…えっと…凪隼人っていいます。16歳ですっ!」
よろしくお願いします!と頭を下げると、老婆は目を丸くして、それから『ひゃっひゃっひゃ』と魔女のような笑い方をした。
「可愛らしいのぉ、よいよい。何を複製するんだ?」
「あの…これを」
ポケットから残りの一つを出して老婆に渡した。
「薬ぃ?」
「はい」
「んなものどこでもあるじゃろ」
「ち、違うんです!これがなくなったら手に入れられないんです!」
「貴重なものか…よし。作ってやろう」
「ありがとうございます!助かります!」
そう言うと、老婆はコクンと頷いて、小さな声で鍋に呪文をかけた。それから、薬味のようなものを入れて、最後に俺の薬を入れた。
また鍋がグツグツ沸騰してきて、おたまで底をかき混ぜて掬うと、薬が沢山おたまに乗って出てきた。それを木のお皿に移して、緑の液体を流した。
「ほれ、できたぞ」
「すごい…!無くなったらまた来てもいいですか?」
「うぬ、待ってるぞ」
ありがとうございました。と深く頭を下げてそこを離れた。
「あのおばあちゃんすごい。一ヶ月分くらいはあるよ」
「あのババア腕は確かだからな」
この世界にはαが居ないし凄く安心できる。と思った直後、ふと思った。確かαって色々とオオカミに近いんだよね?アソコがオオカミとほとんど同じなのは知ってる。ヤった後は確実に孕ませるために暫くは抜けないとかなんとか……ん?てことはカイとレックは?大丈夫?もしこの人たちにも発情期があったら…?
……やっぱり安全ではないのかもしれない。それによくよく思い出してみればオオカミのαβΩが始まりだったような……あの感じだとカイがα だよね?
はぁ、俺ってホントバカ。保健の授業もっと真面目に聞いておくべきだった。そう思いながらカイを見上げた。
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