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【White Day Present.】1

【欲しいものはたくさんあって。 でも、ほんとうに欲しいものに 最近ちょっと悩んでて。】 「はぁぁ………」 どうも皆さんお久しぶりです。 飴井悠里です。 ただいま絶賛ため息中。 なんでって? それは…… 「…あいつ、いつまであそこいんの?」 大きなデパート1階の、青と白に囲まれた催事場。 天井まで積み上げられた大量の箱・キラキラな装飾・忙しなく商品を運ぶお店の人 ーーそこに似合わない、もさい頭。 (ったくもー……) 事の発端は、先月あげたバレンタイン。 特別雰囲気もなくサラっと渡しただけなのに、瓶ぞこ眼鏡越しでもわかるくらい驚愕な表情で受け取られた。 別に、こいつだけのために買いに行ったんじゃない。 お気に入りたちにいつも配ってるから、そのついでってだけだ。 ……箱が1番大きかったのは、ただのクリスマスのお礼だし。 (けどさ、家族以外から貰ったことないってすごくない?) 今どき珍しいと思うんだけど。 普通にお返し欲しさでクラスの女子が男子全員に配ったりしてるじゃん。 あ、もしかしてこいつハブられたとか。 あり得る、だってもさ男だもん。 「はぁぁ……」 クリスマス以降、話をしたりと関わりをもつようになった仲。 会話らしい会話はしてないし一方的にこっちがとっかかってるのかもだけど。 それにおどおどしながら対応するもさ男を、学校のみんなは「パシリにしたのか」と勘違い(?)してくれて。 (まぁ勘違いではないんだよなー。購買のパンとか買ってきてくれるし、飴も絶対くれるし) でもパシリではない…気がする。 友だちでもないような……じゃあお気に入り? 「いやいやいや」 それはない、だってもさ男だよ? いくら過去に会ってたからって、告白されたからって、お気に入りにしていいわけが。 『ーー僕の〝独占欲〟』 キュン (って待て待て待て) 確かにあの言葉はカッコよかったけども! 今でも思い出してキュンとしてしまいますけども! 認めるよここまでくれば!!けど今はそれ置いといて、 (やっぱり、あいつには荷が重かったか) たかがバレンタインの義理チョコ相手にここまで悩まれるとは思わなかった。 最近帰りに追ってこないなーと思って付けてみたら、こういうことか…… ったく。 「はぁぁ………」 今日も頼りなさげに曲げられている猫背に、ため息を吐きながらゆっくり立ち去った。

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