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ホワイトデー 当日。 (結局この日までもさ男と話さなかったなぁ) あんなに追いかけられてたのに、なんか不思議な気分。 あいつと出会う前に戻ったみたいだ。 出会う前ってどう過ごしてたっけ? もう大分昔な気がする。 朝1番にお気に入りたちからのLINEを見て、それで今日会う人を決めて、予定立ててーー 「お、飴井ちゃんだ!おっはよー」 「ツッチー!おはよ〜早いね」 「飴井ちゃんもじゃん、早いの珍しい。 けど、ラッキー!」 「え?」 差し出された、いつもの飴が入った袋。 「はい、これ言ってたホワイトデー。いやーちょうど会えてよかったわ。 もしかしなくても俺1番乗り?」 そう言えばこの前そんな話したっけ。ちゃんと2袋ある。 わぁ、嬉しいな。これでしばらくは自分でストックしなくてよさそう。 僕もラッキーだ。早速、開けてーー (………あれ?) 「? 飴井ちゃん?」 あれ、どうしたんだろ僕。 なに躊躇してるの? 笑顔が 返せない。お礼が言えない。声が出ない。 ーープレゼントが、受け取れない。 なんで? こんなこと今までなかったのに。 一体、どうして…… ポツリ 「もさ、ぉ」 「ん?」 「ーーっ、うぇぇえぇ」 「えぇえ!? ちょ、飴井ちゃんっ!?」 そうだ、あいつ、あいつのせいだ。 僕のこと好きって言ったくせに。 告白断っても、めげずにストーカーしてきたくせに。 クリスマス突然押しかけたくせに。 「独占欲」だって。「1番に好きだよ」って言ったくせに。 ーーどうして、1番にくれないんだ。 (そうか、僕 期待してたんだ) 催事場で一生懸命選ぶ姿を見ながら、期待したんだ。 全然追いかけてこないくらい悩んで選んでくれてるんだって。テスト勉強そっちのけなのかなって。 どんなのくれるかな、あいつのことだからきっと1番に渡してくるんだろうな、もしかして当日既に玄関前いたりして、って。 (なんだよ、あいつ) いないじゃんか、散々僕のことほっぽいたくせに。 そんなに自分に自信ないわけ? こんな僕に告白しときながら猫背だって未だになおらないし。 お気に入り全部切ってほしいんでしょ? 僕のこと独占したいんでしょ? 隣にいたいんでしょ? なのに、なのに…… 「うわぁぁぁあぁぁ」 出てきた涙は全然止まらなくて、どんどん どんどん流れてくる。 イライラで泣くことってあるんだ。僕に告白してきたのに全然頼りないもさ男に腹が立って仕方がない。 あいつが家族の話をしてくれたから、僕もお母さんと話そうと思えた。 クリスマスだって寂しくなかった。あの時の言葉は今も僕の胸をキュンとさせて、カッコよかった……なのに。 こんなに心掻き乱しといて、僕のこと放置かよ。何様?? (そんなに自分の選んだものに、自信がもてないのか) 「ーーっ!」 本気で腹が立つ。もさ男にも、それに振り回されてる自分にも。 これ受け取っていいの? もう受け取っちゃうよ? 1番に渡したいんじゃないの? 僕のこともういいの? そんなに、僕のことーー 「飴井くん!!」

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