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ー鼓動ー22
「なら、兄さんのでいいじゃん」
「誰も俺のやって言うてへんやろ。 そりゃ、望のでやってええんやで」
「それなら、兄さんのでいいや、双子なんだし、寧ろサイズ一緒なんだろうしねぇ」
「ほなら、和也のだってええ訳やろ? 和也と望っていうのは、身長も体型も似てる訳やしなぁ、なんで、そこは望の服にこだわるん?」
「だって、そこは、兄さんのがいいからに決まってんじゃん」
「はいはい、もう、そういう事だったらもうええわぁ。 もう、そこは望のにしといたらええやんか」
「あのさぁ、そう言うけどさ、好みみたいのは違うんじゃねぇのか?」
「今は好みとかって言ってる場合じゃないんじゃない? とりあえず服さえあればいいんだからさぁ」
「え? あ、それもそうか」
「……って、事で僕は兄さんのにするねぇ! 逆に和也の服の方が僕からしてみたら好みじゃないのかもしれないよね?」
「そこにこだわらないって言ってのは誰じゃい!」
そう雄介は朔望に向かって突っ込みを入れると洗濯をしにリビングから出て行くのだ。
「雄介が洗濯に行ったんなら、俺は食器でも洗おうかな?」
「じゃあ、僕は掃除しますね」
「ああ、そうだな。 で、朔望達はどうするんだ?」
「だって、和也達は掃除とかしちゃうんでしょう? なら、兄さんとお勉強しようかと」
「はぁああいい!?」
「……って、その反応、もしかして、何か勘違いしてない? って、和也の方も欲求不満!? さっきは雄兄さんと兄さんの話しかしてなかったけど、実際、和也達も禁欲生活みたいなのをしてる訳でしょう? なら、完全に欲求不満になるって事なのかな?」
「へ? あ、ちょ、ちょっと……へ? あ……」
今の朔望の言葉に和也の方は完全に動揺してしまっているようで、行動と言葉に完全に出てしまっていた。
「え? あ……ん……どうなんだろ? まぁ、俺も雄介と一緒なのかな? 側に裕実がずっといるから満足してるっていう感じ!?」
「それって、新婚生活が終わってしまった夫婦みたいな関係じゃん! 相手が側にいるのが当たり前過ぎて相手に欲情しなくなってしまったって事!?」
「はぁああ!? そんな事、俺は言ってねぇだろうが、だから、側に居てくれるだけで今の俺は満足なんだって! ま、確かに、たまにはって思う事もあるけどさ。 俺はこの島で働くようになって、毎日、どれだけ緊張感持って働いていると思ってるんだ!? 二十四時間……誰が診療所に来るか? っていうのが分からないから、実際、そんな事してる暇なんか無いんだっつーの! ホント、東京にいた頃とは違う生活をしてんだよっ! 東京で働いていた頃の方がよっぽど、時間あった感じがするんだけどよ。 なぁ、望……」
「そうだな。 確かに東京の病院で働いている時の方が時間はあったよな?」
「そう言ってるけどさ、実際、こっちに来て、夜に何か怪我人とか病人とかって来た事ある?」
その朔望からの質問に俺と和也は視線を合わせてるのだ。
そして和也の方は視線を宙へと浮かせて。
「あー、いやぁ、今の所はないかな?」
「そうなんでしょう!?」
「……って、分かったような事を言うなよなぁ。 あくまで、今の所なんだしよ……」
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