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ー鼓動ー28

「アイツ等も大人になった訳やし、色々と空気が読めるようになったんと違うの?」 「へ? あ、そうなのかもしれねぇよな。 でも、拍子抜けっていうのかなんていうのか」 「ま、確かにそうやんな。 ちょっと拍子抜けな所はあんねんけど、それはそれでええやんかぁ」 「まぁ、確かにな……」 「ちょっとええか?」 「……へ? 何だ?」 「ノートパソコン使わせて」 「パソコン?」 「ああ、ほら、今日はアイツ等に診療所の方を任せておったやろ? せやから、その様子を見ておきたいし」 「え? あ、ああ」  とりあえず俺は雄介の言葉に頷くのだが、何でパソコンを見ておく必要があるのか分からないままでいた。  雄介がパソコンを開くと患者さんのカルテが出てくる。  ……あ、今日の分のか。 「やっぱ、朔望やって、ホンマ分かりやすい書き方しとるやんかぁ」  そう独り言のように漏らす雄介。 「……へ?」  俺は今、雄介の隣りで雄介が開いているパソコンを覗いて見る。  ……そういや、今日の雄介は診察室の方じゃなくて待合室の方で島の人と話してたんだっけな? 「もしかして、今日の患者さんのカルテ見てるのか?」 「そういう事やねんなぁ。 今日は丸っ切り診察の方を朔望に任せておったからな。 せやから、診察室の方は全然俺は把握出来てなかったし、それで、一応、カルテ見て確認しておきたかったんやって」  ……本当に雄介には感心させられる。 本気で医者になってくれたんだと改めて思わされた位だ。 そうじゃなきゃ、今日の患者さんのカルテなんてチェックなんかしない訳だしな。 「ま、俺は朔望や歩夢の間にいたからなぁ。 その様子を見てたんだけどよ」 「俺は待合室に居ったから、全く診察の様子見ておらんかったしな。 こういう風にカルテ書いてくれるんやったら、明日からの診察をアイツ等に任せても大丈夫みたいやなぁ、それで、俺達の方はゆっくりと東京に行けるって事やんなぁ」 「え? あ、うん、確かにそうだな」  そして雄介はそのパソコンを閉じ体を伸ばしていた。  丁度それと同時にご飯が出来たらしく、 「ご飯出来たぜ!」 「ほなら、ご飯食べようか?」  雄介は俺の方へと視線を向けるとそう言って来る。  それと同時に俺は頭を頷かせていた。  俺と雄介はリビングテーブルへと向かうと、 「和也、スマンな。 朝も作ってくれたのに、夕飯も作ってもらって」 「そんなの当たり前じゃねぇか。 だってさ、約束しただろ? 家事は交代でするってさ、それに、明日から暫く雄介達は東京に行くんだったら、忙しいと思ったしさ」 「え? あ、まぁな」  ……ホント、和也ってそういう所空気読めてるんだと思う。 普段はこう空気読めてない感じがするんだけど、こういう時っていうのは空気を読んでくれてあれやこれやとやってくれるんだからな。

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