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ー鼓動ー102
そして俺はまた雄介の隣りを歩いてその店へと向かうのだ。
そう今日俺が学んだ事というのはそれだった。
雄介の後ろに付いて歩くのでは雄介の事を見失ってしまう可能性に気付いたからだ。 だから今はもうこうして雄介の隣りを歩くしかない。
雄介の方もその事について気付いてくれているのか、いつもより歩くスピードを抑えといてくれているようにも思える。
そして無意識のうちに俺に合わせてくれているようだ。
駅周辺っていうのは本当に沢山の人がいたように思えたのだけど、駅から少し離れてしまうと人の流れというのは減ったようだ。
「駅周辺だけなのか? 人が多いのっていうのはさ」
「あ、まぁ……そうなんやろな。 確かに駅周辺から少し離れただけで、さっきよりも人が減ったような気がするわぁ。 ま、駅周辺だけで十分遊べるしな。 ま、こっちの方は何か目的が無いと来ないと思うし」
そう言われてみれば駅から離れると、今度目に入ってきたのは本屋とかデパートだった。 確かにデパートや本屋だったら目的が無い限りこっちまで来ようとは思わないだろう。
そして気付くと大分駅から離れてしまっている為か、風俗店もやたら増えて来たようにも思える。
そこで俺は雄介に聞いてみる事にした。
「な、雄介って、その……こういう風俗店みたいな所に入った事ってあるのか?」
「ん……無いのかもしれへんなぁ? 俺やって、大学の時から消防関係の学校とか行ってて寮とかに入ってたから、そんな暇さえもなかったしな」
「そうだったのか? なんか、意外にお前って……そういう風俗店に行ってそうなイメージがあったんだけどな?」
そこで俺はまたクスクスと笑っていた。
そう今のはふざけて言ってるからだ。
「アホか……。 ホンマに俺だって、そういう時間っていうのは今までなかったんやって。 それにホンマに女性には興味っていうのはなかったしなぁ」
「あ、そっか……雄介はもう大学時代の時には女性には興味が無いって自覚してたんだもんな」
「あ、あー、そう言われてきればそうなのかもしれへんなぁ。 ほな、まったくそういう風俗店に縁がなかったって事になるやんか」
今日という今日は本当に普段は話さないようなくだらない事を話しているのかもしれない。 本当にそれだけ今の俺達のは頭の中に余裕があるという事なんだろう。
「そういう望こそ、風俗店には行った事ないんか?」
「俺の方は無いに決まってんだろ? 大学の時には一応彼女も居たんだしさ。 その後だって、全く女性には興味なかったんだしさ、ま、正確にはその彼女以降、女性っていうのはトラウマになっちまったからな。 それにいつに間にか暇もなくなってたし」
「そういや、合コンはやった事があったって言っておったよな?」
「まぁ、それは、あくまで人数合わせっていうやつで、んー、まぁ、そこでその彼女と会ったんだけど。 それだけだ……女性と付き合ったっていうのはさ。 その後っていうのは、もう学校に仕事にって忙しかったから、逆にそんな暇なんてなかったっつーの!」
「あ、まぁ、そうだったんやろな」
「なら、聞くな」
「え? でも、望のそういう事に関して気になったしな」
その雄介の言葉にひと息吐く俺。
「俺はその彼女以来、ホント何にもなかったんだよ」
「分かったって」
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