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ー鼓動ー104
「そん時は和也が俺ん家に来てくれて……ほんで、最後の方で、『お前が望と付き合わないんなら、俺が望の事奪うからなっ!』ってな……脅して来ておったんやけど、和也はその後笑顔でなんていうのか、俺の背中押してくれたっていうんかな?」
「へぇー、そうだったのか!? それって、和也はその事を本気で言ってた訳じゃなかったって事になんだよな?」
「多分な。 多分、俺の方が和也に望に対して本気なのか? どうなのか? っていうのを試されてたような気がするわぁ」
「まぁ、そういう事なんだろうな。 ホント、そういうところは和也って凄いんだよな」
「ああ、俺もそこはそう思うわぁ」
そんな事を話ししているうちに、どうやら今回雄介が目的にしていた店の前へと着いたらしい。
「あ! ここやでっ!」
「へぇー」
そう言いながら、俺はその店を見上げる。
そこには『女性の方、入店お断り』という貼り紙がしてあった。
当然ながら、その貼り紙のおかげで中に女性の気配は無いようだ。
見た目は普通のお店っていうのかドアはガラスで出来ているおかげで中は見えるようになっていた。
「こういう店って普通にあるんだな」
「ま、女性客っていうのは入店禁止になっておるし、俺等みたいな人が気軽に入れるっていう感じなんかな?」
そう言うと雄介は早速店内へと足を踏み入れる。 それを追い掛けるようにして俺も店の中へと入って行くのだ。
中に入ると、そこには所狭しと商品が並んでいる。 本当にその店には、その手の玩具や道具しかない。
そう所狭しと商品が並んでいるのだから、通路というのは人一人が通るのがやっとの感じだ。
そして雄介が小さな声で、
「ここやったら、手繋いでおっても違和感無いと思うで」
そう言って雄介は俺の手を握って来てくれる。 それからは雄介に引っ張られるようにして店内を歩く俺達。
確かに違和感は無いようだ。 他のお客さんもパートナーと来ているお客さんというのは一緒に手を繋いで店内を歩いていたのだから。
恥ずかしいというのも半分、嬉しいところも半分いう感じだ。
確かに外で雄介とは手を繋ぐ事は出来ないけど、ここだけはホント自由な感じがする。
「ローションと他何にする?」
「……へ? え?」
いきなりそう振ってくる雄介に顔を赤くする俺。
流石にそれは恥ずかしくて答える事が出来ない。
「あ、それは……雄介に任せるよ」
……だって、実際の所、俺の方は店内にある商品っていうのをまともに見る事が出来てないんだからさ。
と付け加えたかったのだけど流石にこの状況では恥ずかしくて言えず、雄介に任せるとしか言えなかった。
「ほな、何でもええんやな? 後で文句言わんでな」
「え? あ、うん……」
先に念を押されてしまった俺。 ま、今の状況では仕方ないかな?
俺は視線を下に向けながら店内を歩く。
流石に今の俺には刺激が強過ぎるのかもしれない。
こういう物も久しぶりに見てるからなのかもしれないのだけど。
このままずっと見ていたら、流石の俺でも興奮するっていうのか、今夜の事を想像してしまいそうな気がして仕方がない。
だから俺は見ないようにただただ雄介に付いて行くしか出来なかった。
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