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ー鼓動ー117
俺は雄介の話が途切れた所で浴槽に浸かり何も考えずに天井を見上げていた。
本当に何も考えない瞬間。
頭の中を空っぽの状態にして、そう今までこんな事なかったような気がする。 今までは、そう常に俺は何か考え事をしていた。 病院で働いている時も患者さんの事や雄介の事で頭がいっぱいで、今は島の住民の事を考えていたような気がする。 だけど今は本当に何も考える必要がない瞬間。
そうだ、あんなに色々とあった雄介との事だって今はそんなに考える事は無くなったし。
こういうのって幸せっていうのかな?
「あ! ほんならさぁ!」
と急に雄介が声を掛けて来る。 しかも何か思いついたようにだ。
「……へ?」
俺は顔だけを雄介の方に向けるのだ。 すると雄介と視線が合う。
「……へ? いきなり何!?」
そして雄介は俺の腕を掴んで来て、今度は少し興奮気味に、
「あのな……月一でも三ヶ月に一度でもええから、朔望達に島に来てもらうっていうのはどや?」
「……ん? ぁあ! なるほどな、でも、和也達の方はどうするんだよ」
「そん時は、朔望達の看護師さん達呼んだらええんと違う?」
「あ、そっか、それならいいのかもしれねぇな」
「月一位やし、あー、やっぱ、月一は流石にキツいか。 ま、三ヶ月に一回とか息抜きみたいなのをさせてくれる程度でええねんけどなぁ」
「まぁ、それ位だったら、許してくれるのかもしれねぇな」
「せやろ?」
「まぁ、朔望がオッケーしてくれたらいいんじゃねぇのかな?」
「そういうこっちゃな」
そう言うと雄介はまた浴槽の壁へと寄りかかる。
……ま、いいか。
ちょっと寂しい気もするんだけど、これからの事を考えると今は本当にゆっくりタイムなのかもしれない。
「あー、雄介、そろそろ出ようか?」
「せやね、もう温くなりそうやしな」
そう俺が提案すると雄介の方もお湯から上がり脱衣所へと向かうのだ。
確かに今まで浴槽に浸かってゆっくりしていたのだけど、ココに来たという事は後はもう抱かれるしかないという事でもある。
……あ、忘れていた事かも。
……しかも自分から出ようとか言ってたしな。
体を拭くとホテルに置いてあるバスローブで体を包み込む。
……確かにバスローブって体を包むって事しか出来ないよなぁ。 下着とかって付けちゃいけないみたいな暗黙的ルールみたいなのもあるしさ。 しかも、バスローブって膝までしか丈が無くて、女性が履いてるスカートみたいなもんなんだろうし。 下がこうスースーして落ち着かないのかもしれない。
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