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ー鼓動ー121

 ……え? まさか!? マジで抱き方忘れちゃったとか!? 流石にそんな事はないよな? まぁ、キスは問題なかったと思うのだけど。  ……確かに暫くヤってなかったしな。  今度はベッドの上に置いてあったクッションを手にして抱きしめながらテレビの方を見つめている雄介。  ……ん。  あれから今度はなにも仕掛けて来ない。  でも! さっき、あのお店でローションとか買っていたんだから、流石にそういう事に関して忘れてはいないと思うのだけど。  さっきまで俺はあんなにドキドキしていたのに、今は普通の鼓動に戻ってしまっていた。  今はその雄介の行動の方が気になって仕方がない。 という所だ。 「あー! この番組満足したわぁ!」  と急に気が抜けてような雄介の声。 それと共に雄介はベッドの上に大の字になる。 「……へ!?」  俺の心配をよそにもしかして今見ていたテレビ番組を集中して見てたって事なのか!?  それだったら余計に俺は嫉妬する!  今度、俺は今さっきまで雄介が持っていたクッションを抱き締めながら頬を膨らませていた。  ……もし、それだったら、納得行かない! 今、俺が悩んでいた時間を返してくれっ!  っていう状態だ。  そして雄介は俺の気も知らないのか、少し顔だけを上げて、 「どないしたん?」  と聞いてくる。 「………」  その言葉に俺は答えない。 いや答えたくなかった。 「ちょ、なんやねん……」  そう言って雄介は起き上がって来たのか俺の肩に腕を回してくるのだ。 「何でもない!」  小さな声で言ったつもりだったのだけど語尾の方は強く言っていたのかもしれない。 「その言い方やと何でもないようには思えへんのやけど?」 「だから、何でもないんだってばっ!」  俺は雄介の腕を振り払おうとしたのだけど、雄介に避けられてしまった。 「頬まで膨らませて何怒っておるの?」  そうストレートに聞いてくる雄介に腹が立ってくる。

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