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ー鼓動ー141

「ま、そうやねんな……まさか、望がそないな風に言うてくれるとは思うてなかったわぁ」  そう言いながら雄介は微笑み俺の顔を見上げてくるのだ。 「せやけど、俺は望の事を思うて」 「……そんな事分かってる」  そう雄介は俺の腰の辺りをギュッと抱きしめてくる。  雄介は体も大きいのだけど腕も長くて太い。  その大きな腕に抱きしめられると安心するのは気のせいであろうか。 「ホンマに俺は望の事……まだまだ好きやし」 「ああ、うん……それも……」 「全然離れてくないって思うとるし」 「それも大丈夫だ……俺もそう思ってるから」 「やっぱ、アカン! 俺はホンマに望の事が好きや!」  今日、どれだけ雄介は俺に想いを伝えてきてくれているのであろうか。  今の俺の鼓動はきっといつも以上に早まっている。  俺だって雄介に負けない位、雄介の事が好きだ。  だから今は本当に雄介にその気持ちを伝えたいと思っている。  だから今日は雄介の言葉に素直に答えているのかもしれない。 「ホンマに望の事好きなんやって」  そう愛おしそうに俺の事を見上げ見つめてくる雄介。  そんな雄介に何だか唇を重ねたくなってきた。  ……俺からキスしてもいいですか?  ……雄介の事が本当に好きだから俺からキスしてもいいですか?  俺は心の中で自分に問ってみる。  勿論、その質問の答えは「YES」に決まっている。  そうだ俺だって雄介の事が好きなのだから俺からキスしたい時だってある。  だから雄介にキスをしたいって気持ちになっているのかもしれない。  俺は目を瞑り覚悟を決めるとゆっくりと雄介の唇へと近付いていく。  そして唇が重なり合う。  今日は俺から激しくキスがしたい気分で何度も何度も角度を変えて唇を重ねる俺。 「ん……ふぅ……」  と声を漏らしてきたのは雄介の方だった。

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