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ー鼓動ー154

 それは座って互いに向き合ってる体位だった。 「あー……それも却下……」  また雄介との状態を想像してしまった俺は直ぐにその体位も却下してしまう。 「そないな事言うとったら、なんも出来へんやんか。 まぁ、その逆のバージョンもあるみたいやけどな、それやと望の顔見えへんしなぁ」  そう言いながら雄介は頭を掻いている。 雄介はそれが癖なのであろうか?  考え事をしている雄介はいつも頭を掻いていたような気がする。 「ほんなら何がええの?」 「それなら、悩む必要はねぇだろ? 普通にいつものようにやればいいだけだし」 「んー、なんかたまには違う体位でしたいと思っておるんやけどな。 こういう事出来るのはたまにしか出来へん訳やし」 「でも、俺的にはどうでもいいの」 「って、事は俺とシたくないんか?」  それを低く切なそうに言う雄介。  ……流石に今の言葉はまずったのかな?  と思ってしまっていた。 「あ……いや……そういう訳じゃ……」  そう俺は雄介から視線を外し言ってしまっていたのだ。 「せやから、ええって事やろ?」 「それ、どういう意味だよ……雄介の言い方だとダメっていう方なんじゃねぇの?」 「え? あ、まぁ……そうやんな。 だって、望が投げやりな感じなんやもん、俺の方やってヤル気無くしてくるわぁ」  そう拗ねたように言う雄介。  いや、もう雄介は完全に拗ねているのであろう。  ……やっぱ、そんな俺じゃあダメか。  俺は仕方なく雄介の側へと近寄って行く。  俺からしてみたら拗ねてしまった雄介をどうしたらいいのか? っていうのは分からない。 だけど雄介とはもう喧嘩したくない気持ちはある。  だから今の俺は雄介の方へと近寄って行ってみた。  後ろから雄介の事を抱き締める。 「ゴメン……俺が悪かった。 本当に俺はお前の事が好きだから、もう、喧嘩なんかしたくないからさ」  その言葉に反応する雄介。  そして背後にいる俺の顔を見てくる。  再び正面を向いてしまう雄介。 「そやな……俺も望に無理強いみたいな事してスマンかったな。 ほなら、どうする?」  もしかしたら、これが雄介からの最後の忠告なのかもしれないと思った俺は、 「やっぱ、普通のでいいからさ……あー、でも、雄介の顔を見ながらっていうのもいいのかもしれないな……座ってな」  そう最後の方は呟くように言う俺。  すると雄介は俺の手に手を添えて来て、 「ほなら、そうするか? 座ってお互いの事見ながらっちゅう事でええねんな?」  その言葉に俺は頷いていた。

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