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ー鼓動ー171

 東京にいた頃と変わらない雄介。  ただ違うのは自由にスーパーに行って買物が出来るという所であろうか。  島にいる時は親父が送ってくれる仕送りで料理しなくてはならないだから自由にメニューは決められない。  だから俺は今食べたい物を雄介にオーダーしてみた。 すると快く承諾してくれた雄介に今は感謝したい。 「雄介……本当に今まで何もかもありがとうな」  今だったら何だか素直に言えそうな気がして雄介に感謝の言葉を言ってみた。  ただ、まだ目を見てっていうのは出来なかったけどな。 「ん? え? あ……んー……」  と急に考え込んでしまった雄介。 「そこは素直にどういたしまして……なんじゃねぇのか!?」  そう俺は雄介の前に飛び出してまで雄介の事を見上げる。 「まぁ……そうやねんけど、なぁ……」  まだ何か考えているような様子の雄介。 「じゃあ……なんだよ……」  そう俺は頬を膨らませてまで雄介の事を見上げる。 「んー、なんやろ? 望に感謝されるんはホンマ嬉しいねんけど、逆にどうしたらええか? っていうのが分からんねんな」 「はぁ!?」 「いやぁー、何て言うたらええねんやろ? いつもこう素直やない望を見てきたかんな、素直やない方が扱いやすいっていうんか」 「おい……」 「あ、まぁ……でも、俺の方もありがとうな。 ホンマ、俺の方こそ望に出会えて良かったと思うとるし」  その言葉に俺は少し考えると、 「んじゃあ、おあいこって事で」 「せやな……」  これでまた喧嘩しそうになったのにも関わらず回避する事が出来た。  喧嘩っていうのは本当に些細な事から始まる事が多い。  でも、ちょっとした事で喧嘩は回避出来るのだろう。 東京にいた頃と変わらない雄介なのだから。

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