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ー鼓動ー189

 確かに雄介の言う通りだ。  のんびりとしていると色々な事が見えて来る。 「ホント、あれからどれくらい経ったのかっていうのは忘れていたけどさ、大きな地震あったんだよな」 「しかも、俺がレスキュー隊員になって異動して望と喧嘩別れしてからやったもんな。 しかも、助けに行ったのに望に頬叩かれるし」 「そんなの当たり前だろっ! ってか、恥ずかしい思い出を掘り出してくるんじゃねぇよ!」 「でもな……何であん時、俺叩かれたん?」 「……へ? そんな事覚えてる訳ねぇじゃねぇか」  俺は雄介にそうは言ったものの何でかを思い出したような気がする。 だからなのか視線を逸らして気持ち的に顔を赤くしてしまっていたのかもしれない。  あの時の雄介は異動が決まっていたのに俺に報告して来なかったって事をだ。 要は俺に隠し事をしていたって事に腹立っていたのかもしれない。 そしていきなり俺の前に現れて、その怒りを俺は雄介にぶつけてしまっていたって事だろう。 勿論、心配していたって事もある。  そんな出来事だって今からしてみたら本当に懐かしい思い出にしかならない。 「じゃあさ、もし、今の雄介だったら、ああいう事あったらさ俺にちゃんと言ってから行くか?」 「今は、まぁ、そんな事はないやろうけど……まぁ、今やったら言って行くんかもしれへんな。 こう正面切ってな……」  雄介はいきなり俺の両腕を掴むと俺の事を真剣な目で見つめて来る。 「……へ!?」  それと同時に俺も雄介の事を見上げてしまっていた。 「え? いきなり……どうした?」  今の台詞……もしかしたら棒読みに近い状態だったのかもしれない。 「望の事が好きや……」 「は、はい!?」  ……いきなりここで言う言葉かよ。 今の流れだったら、普通は……普通は……。 って何もないよな? 異動って事は今の雄介にはない訳だし。 「分かってるから大丈夫だ」 「そんな事言わんと……望からも言うて……」 「はぁ!? 外でか? 俺が外でそんな事言わないの知ってるだろ?」  そう返すと雄介は、 「やっぱ、そういう望の方が俺的にはええわぁ」  そう言うと雄介はまた正面を向いて歩き出す。

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