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ー鼓動ー200

「これで熱があったら、完全に熱中症だな……ってか、お前は小児科医だろうが……そん位分かるだろ? 何で俺に言ってくれなかったんだ? それとも俺の事試してたのか?」  そう俺は半分怒りながら言う。 「試した訳やないんやって……ただ、望に心配させたくなかったっていうだけや……」  その雄介の言葉にため息漏れる。  まぁ、雄介ならそうなんであろう。  俺に心配を掛けたくないから言わない。 「はいはい……分かったから。 でもな、どっちにしろ俺に気付かれるんだから心配するに決まってるだろ? なら、最初っから俺に言っておいてくれた方が安心出来るし」  と話をしていると体温計が鳴り出す。  俺はそっと雄介から取ると、やっぱりだった。  体温計は三十八℃台を指していたのだから。  また、ため息を漏らす俺。 「兎に角、熱中症の時は体を冷やしていくしか対処方法がないんだけどな……対処方法が早ければ早いほど復帰してくるのは早いし。 って、いつ頃から様子がおかしかったんだよ」 「へ? さっきかもしれへんな……」  俺はとりあえず雄介の体をソファへと横にさせる。  流石にベッドまでは運べる力は俺にはないのだから、今はとりあえず雄介にはソファの上に横になってもらうしかなかった。 「さっきってな……帰って来る時か?」 「それもあったんやろうけど……病院にいる時から水分取ってなかったし」 「あ、確かに……俺には時間があったけど、雄介には時間がなかったもんな」  そう俺は雄介がMRI室に入っている間に自販機で飲み物を買って来ていて水分は取っていたのだけど、そう言われてみると確かに雄介は取っていなかったようにも思える。 「あー、ゴメン……俺がその時に買って来ておけば良かったんだな」 「あ、いや……俺だってまさかこないな事になるとは思うってへんかったから構わへんよ」  そういう雄介は笑顔だ。  俺に向かって心配しなくても大丈夫。 って言ってるようだ。 「俺だってな……やっぱ、大人やから、熱中症を甘くみておった結果やしな……」  そう言われてしまえば他に言う言葉がなくなる。 「とりあえず、体冷やせるもん持って来るから……お前は休んでろよ」 「ああ、そうやな……」 「今はそれがお前の仕事なんだし」  俺はそう言うと冷凍庫の中から氷を出して来て、それを袋に詰めるとタオルで巻いて雄介の所へと持って行くのだ。

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