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ー鼓動ー201

「今は冷凍庫に氷しかなかったみたいだからこれで勘弁してくれよ」 「何言うてんねん……これで、ええんやで。 望は内科医の事忘れてもうたのかもしれへんけど……氷嚢とかない場合には氷を袋に詰めてタオルに巻くってだけでええんやって……」 「あ、そうだったのか?」 「きっと、昔の記憶が蘇ったのかもしれへんな?」  そこで一旦言葉を止めた雄介だったのだけど、 「なぁ、記憶少し戻って来たんと違うか?」 「記憶って?」 「記憶喪失の話や……確か望って記憶喪失になった時、記憶喪失なった前の事って忘れておったんやろ? あ、違うか? 完全に戻ったんやったな」 「そうだって……記憶は完全に戻っただろ?」 「あー! もうアカン!! やっぱ、熱で頭がどうかしとるみたいやわぁ」 「それだったら、尚更今はゆっくりしておけよ。 俺は家事やってくるからさ……洗濯とかって溜まってるしな」 「ああ、そうやな」  俺は少し元気になってきた雄介をそのままにして洗濯を始める。  熱中症なら少し休んでいれば直ぐに回復するのだから。  いつも雄介がやっていた事を俺が始める。  雄介と生活を始めてからこうして俺が洗濯とかっていう家事はあまりした事がなかった。 正確には俺がやる前に雄介がやっていた事だから出来なかったという事だろう。  洗濯に掃除……とりあえず今は俺がやるしかない。  しかし、この家で家事をするのは初めてかもしれない。 よく雄介は何も文句を言わずこの家の事をやってきたと思う。  この家は地下から二階まである一軒家だ。 全体的に掃除をするのだって大変な事だと思う。  しかも掃除機だって地下から一階、二階と運んで行かなければならないのだから。  それだって十分な重労働だ。  あ、でも……雄介からしてみたら、掃除機を運ぶのは朝飯前状態なのかもしれない。  俺は地下室を掃除して二階へとその掃除機を運んで行く。  二階の部屋はまだエアコンを入れてない為か異常に暑かった。 掃除と同時にエアコンも入れる。  フッと気付くと二階のこの部屋は前まで俺達が使っていた部屋だったのだけど、今は朔望達の部屋化している為か朔望達の物しかなかった。

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