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ー鼓動ー209
じゃあ空耳じゃない? 雄介は起きた!? いや起こしてしまった!?
「え? あー……」
……どうした? と聞かれても……。
雄介が起きても俺の腕は雄介の体を抱きしめてしまっている。 きっと雄介はそれを聞いてきているのだろう。
でも俺がその事について答えられる訳もなく。
「あ、あー、何も……」
と声が明らかに動揺させてしまっているのだから絶対に何か気付いているだろう。
「そっか……」
と言って雄介という人間はそれ以上は突っ込んでこない。
……ま、そうだよな……雄介の場合には突っ込んで来ない訳だしな。
なら余計自分が今欲情してるという事を雄介に伝えない限りは雄介の場合には分かってくれないのかもしれない。
……いやぁ……流石にそれは俺的には無理だ。
やっぱり今はもう我慢するしか後はないだろう。
無意識だったのか俺は雄介の体をさっき以上に抱きしめていた。
そして顔も雄介の背中に埋める。
「ホンマ……どないしたん?」
そう心配そうに聞いてくる雄介。
「今まで望から俺にこういう事した事ないやんか」
その質問に俺は黙ったままだ。
すると雄介は俺の方へと体を向けて来て、
「なぁ、今の望変やぞ」
と俺の頬を両手で包み雄介の事を見上げる形になる俺。
だけど俺は雄介から直ぐに顔を背けて、
「だから、何でもないっ! って言ってんだろっ!」
そういつも以上に感情的に言ってしまっていた俺。
……これじゃあ、いつもの俺だよな。
そんな俺に怒る訳でもなく雄介はクスクスとしてるだけだ。
「そういうの逆に望らしくて好きやな」
そんな事を言われて心臓がドキリとする。
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