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ー鼓動ー270

「たまにはこういう所に来るのもいいのかもしれねぇな」 「まぁ、たまにはな……こうやって息抜きするのも大事やって事や」  そう言う雄介は手すりに後ろ手に手を付け外を眺めている姿なんかは何だかカッコ良く見える。  もし雄介が消防士や医者にならなかったとしたら、モデルさんにでもなっていたのかもしれない位に雄介はカッコよかった。  それは俺の恋人だからであろうか。 それとも世間一般からしてみたら雄介は普通の部類に入るのか。 っていうのは分からないのだけど。 「こっちには富士山やし、あっちには海が見えんでっ!」  そうまたはしゃぎだす雄介。  はしゃぐと言っても子供みたく大はしゃぎしてる訳ではないのだけど周りにいる人たちに比べたら十分過ぎる程はしゃいでいるように見えてしまっていると言った方が正解なのかもしれない。  俺は雄介の後をゆっくりと着いて行く。  平日の昼間だからだろうか。  それとも今はもう一つの高い塔の方に人が集まっているからであろうか。 こちらの方には人があまりいないような気がする。  ゆっくりと歩いていると周りはカップルが多い気がして仕方がない。  ……ま、平日の昼間だからな。  小学生や学生は学校だろうし大人は仕事の人が多いのだからフリーターや有給でも取って来てる大人が殆どだからであろう。  最低限、男性二人でという客はいなかった。  やっと一周して、 「ほな、どないする?」  と聞いてくる雄介。 「そうだな?」  そう腕時計を見ると、まだ、お昼を回った位の時間だった。 「まだ、昼過ぎかぁ。 ホント、どうするか?」  と雄介と二人エレベーターへと乗り込むと地上へと降りて行くのだ。

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