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ー鼓動ー272
そして飲み物を手にする。
今は暑い夏だ。
外に出ている時はこうやって水分をちょいちょい飲んでいかないと熱中症になってしまう危険がある。
もう「喉が渇いたー」と思ってから飲んでいたのでは遅い場合もある。
ある話によると「喉が渇いた」と思い始めている時にはもう既に体から水分がなくなりつつある状態だっていう事を聞いた事があるからだ。
そんな飲み物を雄介は一気に半分位飲み干していた。
「そんなに喉乾いてたのか?」
「ぁあ! そうなのかもしれへんな」
「ま、それなら、何処かに行くんじゃなくて、帰るか?」
「……へ? そうなん?」
「暑い外にいるよりマシだろ? 飯も適当にテイクアウトとかして買って行ったらいいんじゃねぇのか?」
「そうしたい所なんやけど、また、家の方に帰って行くのはええねんけど……こっから、一時間位かかねんで。 そないな事しておったら、俺の腹の虫が完全に鳴ってまう」
……こうやって雄介は子供みたいな事を言い出す時もある。
「じゃあ、何処かに入って飯食ってから帰ればいいのか?」
「ま、そういうこっちゃね」
「で、飯食うの何処にすんだよー」
俺はそんなに食欲では欲の方はないのか、今までこういう仕事をしているからなのか、未だにそんなお腹が減ってる気配はない。
いや結構朝食べたハンバーガーがまだお腹に残っているのかもしれない。
「ほなら、やっぱ、牛丼で!」
さっきから雄介はそればっかり言っていた。
「それでもいいんだけどさぁ、俺、まだ、そんなに腹減ってないんだけど」
「大丈夫やって! 小さいサイズもあるしな」
「そっか、じゃあ、俺はまだそん位でいいかな?」
そう決めると今度は雄介が言う牛丼屋探しに歩き始める。
「望ってそういうとこ入った事あんのか?」
「ないかな? ついでに言っておくとラーメン屋にも入った事がないのかもしれないな。 あ! そこは雄介に連れて行ってもらった事あったんだっけな?」
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