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ー至福ー2

 昨日までは朔望や歩夢にこの診療所を任せていたのだからカルテをチェックしておいた方がいいと思ったからだ。 とりあえず行く前に歩夢が心臓外科というのを聞いていて俺の方の診察室を任せておいた。 そう雄介の方は小児科医でもある朔望にだ。 まぁ、俺達が東京に出掛ける前に一応、歩夢や朔望の診察を見ていたから全然大丈夫だとは思うのだけど……。  しかし本当に普段あいつ等というのはふざけてばかりだけど、仕事の時間となるとちゃんと気合いっていうのかスイッチがあるのか、やっぱり真面目なような気がする。 本当にパソコンにはちゃんと書き込まれていたのだから。  俺はそこにホッとする。 寧ろ歩夢なんかも読みやすかったりするのだから。  俺がそこで安心していると雄介が急に俺の診察室に入って来て、 「なぁなぁ、ちょ、ちょー、俺の診察室の方に来てくれへんか?」  と慌てた様子で声を掛けて来るのだ。 そんな慌てた様子で雄介が来ても、俺の方は自分の事がしたかった為か、半分めんどくさいと思いながら俺は仕方なく雄介の診察室へと向かう。  しかし相変わらず雄介側の診察室っていうのは、可愛いというのか子供が楽しめるような工夫がしてあると思う。 大きなクマのぬいぐるみなんて雄介っぽいアイディアと言えばそうなのかもしれない。 しかもどことなく雄介に似ているような気がする。  雄介は自分の診察室に来いと慌てたわりには椅子に座ってしまっていた。 「……で、朝のこのクソ忙しい時間に俺の事を呼んでなんなんだよ」 「あ、それな……な、パソコン見てくれへんか?」 「え? あ、ああ……」  雄介がそう言うもんだから、俺はパソコンが置いてある位置まで顔を下げると雄介の言う通り雄介側のパソコンを覗くのだ。 「あ……」  俺は思わず声に出してしまっていた。 そう本当に朔望の方もこう丁寧にパソコンの方に色々と書いていたからだ。 きっと雄介と俺とで島から出掛ける前に雄介から書き方みたいなのを聞いたりしていたからなのか、朔望達も同じように書いておいてくれたからだ。 「それだったら、歩夢の方もホント丁寧の書いてあったぞー」  俺はひと通り朔望の書いた診察内容を読むと背筋を伸ばして雄介に言うのだ。 「アイツ等っていうのは普段ああやってふざけておっても仕事にはホンマ真面目やったんやなぁ。 なんか、それだけでも分かって安心したっていうんかな?」 「ま、確かにそうなのかもしれねぇよな。 普段が普段だけにふざけてるようにしか見えてなかったけど、仕事にだけは真面目だっていう事が分かって良かったんじゃねぇのか? ま、こういう仕事してんだ……人の命が掛かってる仕事なんだし逆に言えば仕事中っていうのはふざける事が出来ないからな。 だから普段はふざけてるっていう事かもしれないしな」 「ま、そうやろな」  そう言うと俺達というのはクスクスとし始める。

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