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ー至福ー39

「なぁ、前に雄介が言ってたよな? 一回だけ女性と付き合った事があるって、ほら、雄介のお姉さんも言ってただろ?」 「……へ? あ、あれな……」  そう言うっていう事は覚えているという事だろう。 俺は思い切ってその事について聞いてみる事にした。 「なんだっけ? 『雄介は見た目はカッコいいけど、優しすぎるのが嫌』とかなんとかって言われて振られた事があるっていう話」 「別に……その事について話す必要はないやろ?」  そう言って雄介は本当に興味なさそうにベッドの上に転がってしまう。 だが急に半身を起こして来て、再び俺の二の腕を両手で掴むと何でかこれでもかっていう位、力を入れられているような気がする。 「痛っ!!」  俺がそう口にしてしまう程、今の雄介っていうのはがっちりと俺の腕を何故か掴んで来ていた。 そしてそのまま俺の体はシーツの波の上へと倒されてしまうのだ。 「とりあえず、今はこっちに集中して、だってな、今の俺っていうのはな、望の中に入りたくて入りたくてもう爆発寸前やねんて……」  今の雄介っていうのは俺に向かって苦笑いをしているようにも思える。 しかし今の雄介っていうのは急に変だ。 昔付き合った女性の話を聞こうとした途端に態度を変えたのだから。  その女性の事で雄介の過去に何があったのであろうか。 そこが気になる所なのだが、今は雄介の腕によって俺はベッドへと押し付けられてしまっている状態だ。 そして雄介は俺の唇へと唇を重ねてくる。  そのキスというのはいつもより激しくて、俺の息が止まってしまいそうな位長く、そして舌だって激しく絡ませて来る。 俺が苦しくてもがいても離してくれる気配なんて今日の雄介には一切なかった。  確かに今日の俺と言うのは雄介の事を欲してたのだけど、その過去の雄介の彼女の話をしようとしてからは雄介の態度が一変したかのように思える。  かつて雄介が俺にこんな激しく俺を求めてきた事はあったのであろうか。 っていう位だからだ。  あまりにも今日の雄介のキスが激しくて、さっきまで萎えていた俺のモノは再び硬度が増し、先端部分からは透明な液体が溢れて出てしまっている。 しかし今の雄介っていうのは、ただただ激しいだけで言葉は全く発して来ない。 確かにこういう行為をしている時っていうのは、あまり雄介は言葉を発しないのだけど、こういつも以上に言葉を発してないというのか、奥歯を噛み締めながらっていうのか本当に静かに事を進めているとしか思えない。  雄介の優しさなんていうのが感じられない程、今日の雄介っていうのは、何かおかしくなってしまったようにも思えるのだ。

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