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ー至福ー42

 確かに雄介っていうのは本当に優しい性格だ。 だけど優しすぎてもうちょっと押して言ってきて欲しい時もある。 しかも俺たちの場合には雄介がプロポーズとかってしてくれるもんなんだろ? 一応、俺の方が女性役なんだし。  何だか、そう思ったら急に俺の方は萎えてしまったっていうのか、そういう気分じゃなくなったっていうのか、だからなのか軽く息を吐くと、 「自分が悪いんだけどさぁ、なんか今日はもう俺のが萎えちゃったし、気分もそうじゃなくなっちまったから、もう寝ようぜ」  そう言って俺は今まで起こしていた半身を再びベッドの上へ乗せるのだ。  だが雄介の方はその俺の言葉に納得が行ってなかったのか視線を一瞬だけ天井へと向けると、再び俺の方に視線を向けて、 「ほな、望が今日はもうええって言うんやったら、今日はもうおしまいな……」  微笑みながらそう言ってくる雄介に、物足りなさを感じながらも俺は乱れていたパジャマを直し本格的にベッドの上に横になるのだ。  だけどさっきまでの甘い雰囲気とは違い空気が重くなってしまったようにも思える。  今のは俺が悪いのであろうか。  雄介も横になってきたのだけど、俺とは完全に反対側を向いてしまった。  こう喧嘩みたいな事は本当に久しぶりのような気がする。  だけど俺たちの場合にはまともに喧嘩っていう訳ではなくて、意見のすれ違いとかが多いのかもしれない。  本当に雄介っていうのは優しすぎる性格で、俺が嫌がる事はしないし、そんなに自分の意見を主張しないのが雄介だ。 だけどそれをずっと心の奥にしまってしまうのが雄介の性格の一つでもある。  優しすぎる反面、自分の事を沢山隠してしまっているのかもしれない。 だから俺の方は本当に雄介の事をあまり知らないという事だ。 現に雄介の前の彼女の事だって未だに隠されてしまっているのだから。  今はそれもある。 それもあるのだけど、雄介との結婚についてだって、俺達からしてみたら大きな問題だ。  俺と雄介は全然結婚したい気持ちっていうのはあるのだけど、まだまだ世間一般的に同性同士の恋人同士についてだって、どこまで認められているのか? っていうのは分からない。 きっと俺的にはそこが重要なのだ。  島でこうやって開業してしまっているのだから、それをオープンに話して島の人達に認められるのか? っていうのが一番の問題点でもあるからなのかもしれない。  そりゃ、同性同士の恋人について認めてくれる人がいる一方で、やはり人間なのだから同じ意見もあれば違う意見もあるという事だ。 認めてくれない人も現実問題いるっていう事なのだから。

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