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ー至福ー56
「あ……!」
再び美里さんの言葉に驚かされる俺。
確かにそうだ。 美里さんの言う通りなのかもしれない。
美里さんから雄介の事について聞くのは多分簡単な事だ。 寧ろ美里さんから雄介の事を俺に話してくれるのは簡単な事なのかもしれない。 昔の話や隠し事を雄介の口から話してくれる方が、今は大事だという事だ。
何だか美里さんと話をしていると、俺と雄介って恋人としても夫婦になるとしても、まだまだなのかもしれないと思った瞬間だった。
「美里さんが言いたい事、分かりました。 確かに、そうですよね。 やっぱ、そうなると俺と雄介との結婚っていうのはまだまだ先になりそうです」
『え? あ、私的にはそういう意味で言った訳じゃないのよー。 私からしてみたら、吉良先生と雄ちゃんが結婚するのは大歓迎なんだけどね。 ただ、そこはやっぱり二人の気持ちもあるから、どうなのかな? って思っただけなのよ』
「大丈夫ですよ。 後は俺達の問題なので、今日は俺のくだらない相談に乗っていただいてありがとうございます」
『そういう事なら、雄ちゃんに代わってくれる! 全く雄ちゃんがしっかりしてくれないから、吉良先生が悩んじゃってるんじゃないのー!』
きっと最後の方は美里さんの独り言だったのであろう。 そう俺に向かって言っている言葉ではなかったのだから、
「それじゃあ、雄介に代わりますね」
俺は美里さんにそう言うと、みんなが居るであろうリビングへと向かい、和也達とソファでのんびりテレビを見ている雄介に、
「美里さんが今度は雄介に代わってくれってさぁ」
そう言って俺は雄介にスマホを渡す。
「あ、ああ、姉貴が今度は俺にか!?」
「だってさ」
何だかあの雄介が面倒臭そうな表情をしていた。 今まで俺達の前ではあまり見せた事が無い表情なのかもしれない。
雄介は俺からスマホを受け取ると、今度は雄介がスマホを耳へと当てるのだ。
俺は雄介が座っているソファの隣りへと腰を下ろし珍しく雄介の事を見上げる。
だって、そこは気になるところだったからだ。 まぁ、視線はテレビの方に向けながらチラチラ程度っていう位なんだけどな。 雄介ってそういう話、聞いて欲しく無さそうなんだもんな。 でも、ちょっと今回の話に関しては俺の方もかなり気になっているからなのかもしれない。 俺達にとってというのか世の中的にも結婚となると、やはり悩む所だろう。 これから先ずっとその結婚相手と一緒に住むとかずっと一緒に居たりとかしなきゃならない相手なのだから、こう悩むに決まっているのではないだろうか。
現に俺がそうだからだ。
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