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ー至福ー58

「ちょ、ホンマ、和也待ってってー。 本気で姉貴と電話するの大変なんやからなぁー」  本当に雄介は怠そうだ。 完全にソファへへとぐったりとしてしまっているのだから。 「まぁ、美里さんの事だから、望とお前の結婚の事で何か言われたのは想像つくけどな。 ……で、どんな事を聞かれたんだ?」  ホント和也っていうのは、そういう話っていうのか少し位待つっていう事は出来ないのであろうか。 多分、俺だって美里さんからのマシンガントークというのか説教というのか説得させられてしまったら今の雄介のように疲れるに決まってる。  だから俺の方は仕方なく、雄介の方にフォローへと入るのだ。 「和也ー、今雄介はあの美里さんと電話して来たんだぞー。 あの人だから、電話とか会話とかって疲れるに決まってるじゃねぇかー。 だから、雄介が話してくれるまで少し位待っていいんじゃねぇのか?」  その俺の発言で俺に注目が集まったような気がしたのは気のせいであろうか。 いや完全に俺に注目が集まっている気がする。 特に和也なんかは目を丸くして俺の事を見てしまっているのだから。 ま、裕実に関しては普通に俺の方を見てるって感じなのかな? 雄介に関しては……?  そう思って雄介の方に視線を向けると、雄介の方はもう逆に俺のそういう素直な言葉に関して慣れて来てくれたのか、未だにソファに体を預けたままだった。 それともよっぽど美里さんに何か言われまくってきて俺の今の言葉なんか別に関係無いてでも思っているのかもしれない。 「……へ? 望があんな素直な言葉を言ったのに、雄介の奴、まだ復活出来ねぇのか?」 「……みてぇだな。 ホント、よっぽど凄い事を美里さんに言われて来たっていう事なのか?」 「え? あ、まぁ……雄介にダメージを与える程なんだから、本当によっぽど酷い事でも言われたのかねぇ?」 「ま、そうなんじゃねぇの? だから、暫く放っておいてやれよ」 「だな……」  とそこで和也との会話が一旦途切れた所で、雄介は俺の腕を掴んで来て、真剣な瞳で俺の事を見つめると、 「な、望……話あるから、俺等の部屋行こ……」 「……へ? あー……ちょ、いや……まさか、あんな事スるっていう訳じゃねぇよな?」  一瞬にして俺の方はそんな事を考えてしまっていたのか、雄介から視線を離してそう言ってしまっていた。 「はぁ!?」  俺のその言葉に雄介の方は一瞬天井の方へと視線を向けて、 「(ちゃう)って! そうやなくてな……俺等のこれからの事を二人で真剣に話したいだけなんやって!」  そう握って来ている雄介の手に力が籠っている。 そう雄介の方は本当に真剣にそう言っているのであろう。

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