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ー至福ー59

「あ、いやぁ……いい、かな?」  雄介があまりにも真剣に言って来るもんだから、俺の方は警戒してしまっていたのか、そう答えてしまっていた。 「ホンマにやって……! ホンマに望と真剣に話したい事やから、二人だけで話したいんだって……」  決して強くは言わないものの、益々手に力を込め、尚且つ真剣な瞳で俺の事を見つめて来る雄介。 だからなのか否定とかでもないけど、こうなかなか俺の腰というのは上がって来てくれないのかもしれない。 「あー……」  と声だけを上げて、瞳を宙へと漂わせてしまっている俺。  あまりにも雄介が真剣にし過ぎてビビってしまっているのであろう。  だって今の雄介っていうのは、真剣なオーラ出し過ぎてしまっていて逆に怖い位なのだから。 そりゃ体がなかなか動こうとしないのかもしれない。  そんな俺に和也は気付いたのか、 「雄介が望に真剣な話したいって言ってんだろ? なら、二人だけで話しして来いよ。 そこは俺達が出る幕じゃねぇだろうしさ」  そう和也にしては珍しく雄介の味方になっているようだ。 「あ……」  そう言われても俺の体はまだ動こうとしてくれない。 雄介が結婚の事について真剣に話してくれるっていうのは分かってるんだけど、寧ろ、その結婚について真剣に話しようとしているからこそ逆に俺の体の方が動いてくれないのかもしれない。 そう俺からしてみたら、逆に真剣な話というのは苦手だ。 既にそういう話だと分かっているから完全に体が拒否反応を起こしているって事なんだろう。  だけどこれだけ雄介が真剣に言って来てるのだから、昔のように俺が逃げてしまったら逆に雄介に申し訳ないような気持ちになって来る。  だから俺は、 「分かった……」  と静かに言うと、俺の方も真剣な瞳で雄介の事を見上げ、 「俺の方も、その事について雄介と真剣に話したかったから行こうぜ。 だけどさ、その力を込めた手を離してくれねぇかな? 流石に、もう、そこが痛いんだけど……」  そう俺も言うと雄介の方はやっと安心したのか、それとも俺の言葉を聞いてくれたのか、やっとの事で手を離してくれた。  今まで雄介に強く握られていた腕は、若干痺れたようにも感じる。 本当に雄介は今俺の腕を本当に強く握っていたようだ。 それだけ雄介だって、この結婚の話というのは真剣だという事なんであろう。 これからの俺達にとって確かに重要な事だからなのかもしれない。  俺はソファを立ち上がり先頭に立って俺達の部屋へと向かう。 今日はたまたま診療所が休みだったというのか、ちゃんと美里さんだって、俺達が休みの日を狙って電話してきているのだから、たまたまではなく、その日を狙っての方が正解なんだと思う。  多分、俺が先頭に立って部屋へと向かうのはある意味初めてのことなのかもしれない。 それだけ俺達にとって、この話については真剣なのだから。

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