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ー至福ー61
だから俺は一旦握られていた手を離して正面へと向き直すと、今度俺が顔を俯かせて、
「雄介が俺の事をそう思ってくれているのは凄い嬉しいし、俺だって全然、お前と結婚したいと思ってる。 雄介の言う通り、周りの事は気にしなければいいんだしな。 だけど、俺だって直ぐにお前に返事出来ない事がある。 俺の中でそれがずっとずっと引っかかってたんだけど……別に恋人同士でいるんだったら、そこまで雄介に追求しなくてもいいかな? って思ってたんだけどさ、雄介のお姉さんである美里さんに相談したら、それは雄介に聞いてって言われたんだよな。 だからさ……」
そこまで俺は言うと、今まで俯けていた顔を上げて、今度俺の方が真剣な顔で雄介の事を見上げる。 雄介は一瞬、俺の顔を見てキョトンというのか目を丸くしたような表情をしたのだけど、きっと俺の真剣な表情を見たからなのか、一瞬で真剣な表情へと戻し、俺の事を見て来るのだ。
それで俺の方も覚悟を決めたのか、
「なぁ、俺に隠している事、全部、俺に話ししてくれないか?」
その言葉に更に目を丸くしながら俺の事を見つめて来てくれる雄介。 そしてフッと笑顔を俺に見せたような気がしたのだけど、再び天井へと顔を向けてしまっていた。
「確かに、それ、姉貴にも言われたわぁ……。 『吉良先生と結婚するんだったら、雄ちゃんが吉良先生に隠している事を全部話しちゃいなさい』ってな。 『吉良先生は雄ちゃんが隠している事を話してくれないと、雄ちゃんとは結婚出来ないって言ってたわよ』ともな……」
その雄介の言葉を聞いて、俺が美里さんに相談していた事をまんま言われてしまっていた。 俺は今まで直接、雄介に言えなかった事だったけど、美里さんが代わりに言ってくれたんだ。 と思った瞬間だったのかもしれない。 でも、それを聞かないとなかなか俺達の結婚への決意は前へと進む事は出来なかったのだからいいのだけど。
しかし今日の俺と雄介との話し合いは、こうトキメクような事はないのだけど、本当に俺からしてみたら心臓に悪いような事ばかりのような気がするのは気のせいであろうか。 いや寧ろそうだろう。 ってか、今まで俺が完全に避けて来てしまっていたような話だから、雄介との結婚へに対する決意までに話せて良かったのかもしれない。
「望が俺に対して、何か物足りない。 って今まで言って来た意味が今日の姉貴との電話で分かったような気がするわぁ。 そうかぁ……そうやったんかぁ……逆にな、ホンマ、俺が悪かったっていうんか……自分的には良かれと思っていた事が逆に他人からすると隠し事に思えて来たまったって事なんやろな?」
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