「……あ、まぁ……そういう事になるんだけどな」 　一瞬、俺の方は答えるのに遅れてしまったけど、それでも今日の俺は雄介と向き合うと決めたんだから、再び雄介の瞳を見つめて答える。 　そんな俺に気付いてくれたのか、雄介の方も答えてくれる体勢になってくれたのであろう。 「ほな、何から聞きたい？」 「え？　あ、そうだなぁ……？」 　いざ、そう聞かれると質問というのは出てこないもんだ。　視線だって完全に天井の方へと向けてしまっているのだから。 　しかし簡単な事はこの前、和也と裕実とで聞いたような気がする。　だけど俺的には、そういう事ではない。　そうメインの事に関しては、俺からはまだ聞いてないような気がする。　確かに俺が雄介に一番聞きたい事を聞けばいいのだろうけど、それをいきなり聞いてしまうと警戒されそうで、とりあえずまた簡単な物から聞いて行ったらいいのかもしれない。 　ここまで来といて、いざって時に出て来ないんじゃ意味がない。　でも美里さんにも雄介の口から聞けって言われたし、やっぱり聞いてみるしか無さそうだ。 　だから俺の方は意を決したかのように口を開く。 「だからさ、あの……」 　流石は聞きにくい話だけあって、俺の方は今まで真剣に雄介の事を見ていたのだけど、顔を俯けてしまう。　これを雄介の瞳を真っ直ぐ見て聞ける訳がない。 「だからさ……とりあえず、雄介って俺以外の恋人って何人位いたんだ？」 「……へ？」 　まさか俺の口からそんな事を聞かれるとは思ってなかったんであろう。　そう意外な俺からの質問に、裏返したような声が雄介の口から出て来たのだから。 「だから、お前には恋人ってどれ位居たんだよ……って聞いてんだけどっ」 　俺の方も普段こんな事聞かないもんだから、こう最後の方は恥ずかしさでやけくそ気味に聞いてしまっていた。 「あー……それな……。　それを俺に聞いて、望は怒らへんの？」 　その雄介からの質問に気付いた時には見上げてしまっていた俺。　だって雄介がそんな事を聞いて来るからだ。　普通そういう風に聞いているのだから、そこまで考えずに答えてくれるもんなんだろうが、雄介の場合には逆に聞いて来た。 「……へ？　何で、そこで俺が怒る必要があるんだ？　だって、俺の方から雄介に聞いてるんだぞ」 「あ、まぁ……まぁ、確かにそうやねんけどな……。　ほら、人によっては、それを聞いておるのに怒る人とかっておるやんか」 　ま、確かに人それぞれなのだから、今雄介が言ったように、そうやって聞いておきながら怒る人もいるだろう。　だけど俺の場合には、そうやって聞いているのだから怒る必要は無いと思っている。 「とりあえず、俺は怒る事はしねぇから、安心しろ……」 「ほなな……」 　と雄介の方は俺のその言葉を本気で答えてくれようとしているのであろう。　こう天井へと視線を向けてまで考えてくれているのだから。