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ー至福ー65
後は少しずつ雄介の事を聞いていけばいいだろう。 そしたら雄介の方はこれからはきっといっぱい話して来てくれると思うからだ。
俺が横になって天井を見上げていると、急に雄介が俺の両手を押さえて見つめて来る。
それを俺は目を丸くして見上げてしまっていた。
「スマン……ホンマ、こんなにカッコ悪い俺でスマン……」
そう真剣な表情で何故か急に謝って来る雄介。 俺に覆い被さるようにしてきたのだから、何かこう抱いてくれるのかと思ったら、どうやら俺の勘違いだったようだ。 そう謝って来るだけの雄介。
そこは俺的には全然気にしてはなかったんだけど、きっとその純な性格が雄介を傷付けて来ていたのであろう。
俺的には本当にどんな雄介であっても好きだ。 寧ろ、純な雄介が好きなのかもしれない。 だって実際に俺だって医者になるまでは殆ど勉強漬けの毎日だったのだから、雄介が女性と付き合っていた高校時代はキスさえも知らなかった。 だけど、こう友達の話とかでキスの事や女性の事を抱く事だって、その時代位になると勝手に耳に入って来ていた位で、大学に入って合コンで付き合った女性なんかとキスまでは上手くいっていたもんだけど、いざ、となると俺的には知識としてなかった事で本能っていうのか、たった本能だけで動いたもんだから、挿れた瞬間にイってしまっていたという苦い思い出がある。 そっから、俺的にはもう恋人なんか作らないぞ。 と思っていたのだけど、それを雄介が変えてくれたという感じだ。
俺と雄介というのは、似たような事をしてきたという事だろう。
よく類は友を呼ぶとは言うけれど、俺達なんかはまさにその通りなのかもしれない。
そう思うとクスクスとしたくなってくる。 いやもうしていたのかもしれない。
「どないしてん? 急にクスクスして……」
「いやな……今のお前の話を聞いて、俺と雄介って似たような経験をして来たんだなーって思ってよ」
流石にそれだけでは分からなかったのか、雄介は首を傾げているようだ。 そんな姿でさえ今の俺からしたら愛おしい位でもある。
そして俺は雄介の首へと両腕を回すと自分の方へと引き寄せ、
「大丈夫だって……俺はお前の事を心の中から好きなんだから、過去のお前がどんな奴でもけなしやしないし、寧ろ、そんな純なお前の方が俺的には好きだけどな……だからさ、たまには……」
そこまで俺は言うと、もっと雄介の事を自分の方へと引き寄せて、
「たまには、シよ……和也達にはさ……ずっと、話ししていたっていう事にしてさ……」
雄介が隠していた過去を話してくれたからなのか、本当に今の俺っていうのは、晴れ晴れとした気持ちだったからなのであろうか、自然とそんな事を口にしていた。
嘘偽りもない、不安も心配事もない。 だから自分から雄介の事を自然と誘う事が出来たのかもしれない。
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