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ー至福ー84

 でも案外、雄介っていい意味で、ずりーかも……。  その雄介の一言で、俺の心臓の鼓動が通常時よりも一層高鳴ったのが分かったのだから。  本当に今の俺っていうのは幸せの絶頂期にいるのかもしれない。  そこは今までが今までだったのだから、幸せな時が訪れてくれないと不公平だという事だ。  人間っていうのは、幸せな時と幸せに感じない時というのは公平にあると思う。 それが波のように大きい時もあれば小さい時もあって毎日もその繰り返しなんだ。 噂では人間っていうのは運を使ってしまうと寿命が縮まってしまうっていう事も聞いた事がある。 だから運に関しても波というのがあるという事であろう。  いや俺的には雄介と出会ってから、その波が激しいのは気のせいであろうか。 それまでは平穏無事に過ごしている時が多かったのだから。 だけど一度きりの人生なのだから平穏無事に過ごすのもいいけど、こうやって恋人とかが出来て小説の主人公のような波瀾万丈な人生を送って行くっていうのもいいのかもしれない。  もう俺と雄介との付き合いっていうのは、十年以上。 今まで本当に俺達っていうのは、別れずにここまで来たと思う。 時には喧嘩してぶつかり合って来た時もあったけど、それでも完全に別れた事はなかった。 それは雄介が本当に俺の事が好きで居てくれたというのがあるからなのかもしれない。 もし雄介が浮気症だったら、きっとこんなに長く付き合ってなかったかもしれなかったという事でもある。  そういう事を総合して俺は雄介の首へと両手を回すと、雄介の耳側で、 「雄介……俺……本当にお前の事が好きだからな」  その俺からの一言で雄介が顔を真っ赤にしたのが分かった。 ホント、雄介もそういう所可愛いよな。 って思える所だ。  体は男らしいのに中身は本当に優しくて可愛い雄介。 俺はそんな雄介を好きになって良かったと思う。 「な、雄介……」  そう言って俺は雄介の唇に唇を重ねる。 しかし本当に俺という人間は今まで付き合って来た恋人の人数なんて数えるしかいなかった。 だから、こう自分から行くなんて事も出来なかったけど、雄介には本当に色々と教えてもらったような気がする。  自分から唇を重ねる事なんか出来なかった筈なのに、それも雄介に教えてもらった。 そして唇っていうのは甘いっていう事も教えて貰ったような気がする。 舌を絡める事だってそうだ。  俺は唇を名残惜しそうに離すと、今度は誘うような瞳で雄介の事を見上げる。 そうしていると今度は雄介から唇を重ねてくるのだ。  唇を啄む様なキスをし上唇や下唇を舐め、そして口内へと舌が潜り込んで来る。  いつもそんな事をしている筈なのに今日の俺っていうのは、そんな事でもドキドキとしてしまっているような気がする位だ。

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