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ー至福ー95

「へ? それって、どういう意味……?」  その俺の言葉の意味が雄介には上手く伝わってなかったようで、雄介の方は首を傾げてまで俺の方を見て来るのだ。  そういう雄介の仕草というのは案外可愛い所なのかもしれない。  そうだ、雄介っていうのは、見た目によらず可愛い所もある。  確かに男性っていうのは、カッコいいのがいいのかもしれないけど、そうやって仕草が可愛いのだっていいのではないだろうか。  一瞬、俺はそんな雄介にクスリとしたのだけど、話を元へと戻して、 「いやな、昔は携帯電話って無かったじゃねぇか。 それで、思ったんだよなぁ。 一昔前っていうのはさ、携帯電話って無くて、家電だっただろ? なんていうのか、家電だとさ、携帯電話のように直ぐに相手に電話とかって繋がらなかったもんじゃんか、だからさ、もし、携帯電話が無い時代で家電しかなかった場合、雄介は俺とどういう風に電話とか付き合ったりってしてたのかな? って思ったんだよな」  その言葉に雄介はクスリとすると、 「そやなぁ? 確かに携帯電話が無かった時代っていうのがあったんやもんなぁ。 ホンマ、それやったら、どうしてたんやろ? まぁ、そん時はそん時だったんやない?」  雄介のその答え方に逆に雄介らしいと思ったのかもしれない。  俺達はそれを経験してなかったからこそ、そんな事は分からないという事なのだから。 だから雄介だってそう答えたのであろう。 「でもさ、ホント、今の世の中って、携帯がある事によって便利な世界になって来たよなぁ?」 「まぁな……確かにそうなのかもしれへんなぁ。 まぁ、俺が小さい頃っていうのは、携帯電話なんてなかったけど、全然どうにかなったもんな。 例えば、学校で遊ぶ約束をして来て、待ち合わせ場所と時間さえ設定しておけば、ちゃんとその場所に集まってよく遊んだもんやしな。 携帯なんてなかったらなかったで、どうにか、なるもんなんやって……。 でもな、昔の恋人達は家の電話とかで待ち合わせと時間を設定しておいても相手が遅刻したりしてるのさえも分からなかったもんみたいやけどな。 遅刻しててもずっと待ってないとアカンかっただろうし、それに、待ち合わせ場所が合ってる筈なのになかなか相手が来ないと思っていたら柱の真後ろで待っていたっていう事だってあっただろうしな。 その点じゃ、携帯電話っていうのはホンマ便利なもんになったっていう事なんやとなぁ」  その雄介の言葉に納得する。 しかも携帯電話というのは最初電話とちょっとしたメールしか出来なかったもんだったのだが、時代が進んでいくにつれ、色々な機能が付いてきたようにも思える。 カメラ機能にインターネット、着信音とかだ。

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