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ー至福ー96

 今日はとりあえず俺がそんな事を考えていたもんだから、話を雄介に振れる事が出来て、雄介が夕飯を作っている間っていうのは、どうにかなったようだ。  雄介と話をしているうちに雄介の方は夕飯の準備が終わったようで、出来た料理をリビングへと持って来る。  雄介が作る料理っていうのは、本当に見た目からして美味しそうに見える。 料亭とかの天ぷらのようにお皿の上で丁寧に盛り付けられ、そして衣も本当に料亭で見るような黄金に輝いて見えるような色もしている。 そして雄介はソファに座っている和也達の事を呼ぶのだ。 「ご飯出来たでー!」  雄介がそう呼べば、和也達の方はゆっくりと立ち上がってリビングテーブルの方へとやってくる。 そしていつも通りに四人での食事になるのだ。  島での暮らしでは当たり前のように毎日のように俺達というのはテーブルを囲んでいる。 「え? すっげー! んだけどー!」  そんな風に驚いている和也。 だけど主語が抜けていて分からないように見えたのだが、和也が見ている視線の先には雄介が作った天ぷらがあるのだから、和也は天ぷらを見て、そんな感想を述べているのであろう。 「だよなぁー。 ホント、雄介が作る料理って凄いよな?」  俺的には和也の言葉と行動を総合して、和也の話の続きの会話をしようと口にしたのだが、また三人の視線が気になったような気がした。 「何で、最近、俺が発言すると、そんな驚いたような目すんだよー……」 「え? だって、望の言葉が意外過ぎるからっていうの?」  そういう風に言う和也に裕実と雄介までもが頷いている。 「……ったくー」  そんな会話に俺の方は拗ねてしまうのだ。  だってそうだろう。 俺の方はこう素直に和也の言葉に乗っただけなのに、それを言っただけで他の三人は驚いたような顔をしていたのだから。 「ま、まぁ……望も大分四人での生活に慣れて来たっていう事やろ?」  と最後自分の分の料理を運んで来てリビングテーブルに付いた雄介がそう言って来てくれる。  雄介の方もさっきは一瞬驚いたような表情をしていたのだけど、雄介はどうやら俺のフォローの方に回ってくれたようだ。  でも確かに雄介の言う通り、そういう事なのかもしれない。  東京で住んでいる時っていうのは和也達とは離れて暮らしていたのだから、他人は他人なのだけど、まだまだ遠い他人っていう感じがしていたのだから少しは警戒していたのかもしれないのだけど、今は島に来て、ずっと一緒に住んでいるのだから、大分近い他人になってきた、だから俺の方もちらほらと本音を出しているのかもしれないからだ。

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