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ー至福ー98

「ま、そこは、裕実の言う通りだな。 それに、俺達っていうのは、女性ではないから、特に素敵なシチュエーションでっていうのは望まないけどさ、せめて、言葉はそんな単純な事で済まして欲しくないもんなんだよな」  その俺の言葉に再び注目が集まっていた。  そんなみんなの反応に、俺は目をパチクリとさせる。 「……ってか、そろそろ、俺のそういった言葉に慣れてくれねぇかな? 俺だって、雄介と一緒になって変わったんだからさぁ」 「でもなぁー、なんか、望が素直だと、こっちの方が調子が狂うんだよなぁ」 「ま、俺の方は大分慣れて来たけどな。 そりゃ、一瞬は耳を疑ってまうけど、よく考えると、望は変わって来てくれてるんや。 って思い出すしな」  その雄介の言葉に望は気持ち的に顔を赤くすると顔を俯けてしまうのだ。 「まぁ、望の言う通りって事なんだなぁ。 んじゃ、今日は俺達もしっかりと話し合おうなぁ」  そう和也は裕実に向かって笑顔いっぱいで言うのだが、そんな宣言をされてしまったら、裕実だって警戒してしまう訳で、どうやら顔を俯けてしまったらしい。 「な、裕実それでいいだろ? 俺達の将来の事、今日は話し合おうぜ」  和也は裕実の小さな肩を両手を添えてしっかりと目を見て真剣に言っているようだ。 「あ、えー、あー……」  だが本当に裕実の方は恥ずかしいのか和也の瞳を見て何も言えなくなったらしく、動揺さえも隠しきれてないようだ。 「あ、そ、そうですね……わ、分かりました……。 か、和也が僕に対して、そこまで真剣なら構いませんよ」 「うん……分かった。 ありがとうな、裕実」  笑顔で言う和也は何だか嬉しそうに思える。 そして裕実の事を抱き締めるのだ。 優しく強く、そして本当に和也は裕実の事を離さないというばかりに。 「ホンマ、和也は裕実の事が好きなんやなぁ」  雄介はそう裕実達には聞こえないように望の耳側で言い、 「……みたいだな」  そこで俺もクスリとするのだ。  やはり親友のそういう所は微笑ましいのであろう。 それに俺達だって、本当にさっきまで真剣にこれからの事について話をして来たのだから。 きっと今度は和也達の番なのかもしれない。 「なぁ、そういや、雄介が望に隠していた事ってなんだったんだ?」  今まで真剣に話をしていたのは何処にやら、急に和也が俺達の方へと向き直って、そう聞いて来るのだ。 「え? だからだなぁ……」  もうそういう話というのは俺は苦手な方で、それを視線で雄介の方に振る俺。 「……へ? 俺に?」 「お前から話してくれよー」  そう小さな声で、雄介の事を突きながら言うのだった。

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