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ー至福ー109
「ん、んぁ! 何!? あー、朝だったのかぁー!」
そう首だけを起こしてキョロキョロと辺りを見渡す雄介。 そして俺の事を見つけると笑顔を向けて来る。 そんな雄介に一瞬胸をドキリとさせながらも、
「和也が朝ご飯だって言ってたぞ。 冷めないうちに行こうぜ」
「え? あ、ああ……そうやんなっ!」
と言い、雄介は腹筋で一気に半身を起こすのだった。
本当にまだまだ体の方は現役なんであろう。 いや、歳をとったからではなく、消防士だった時と変わらないままでいる。 という事だ。
俺と雄介は部屋を出て、階段を降りて階下へと向かう。 そこで気になったのは、
「なぁ、頭痛の方は大丈夫なのか?」
昨日の夜、頭を痛くさせていた雄介。 だから俺の方は心配になっていたのだから。
「え? あ、ああ、まぁ……大丈夫なんと違 う?」
「へ? あ、ああ……そうならいいんだけどさ……」
「何だか、言葉に間を空けるって、なんや意味ありそうやんなぁ?」
「ん? あ、別に……ただ気になっただけだ……だから、気にしないでくれないか?」
「そういうもんなんかぁ?」
ちょっといじけるような感じで言っていた雄介なのだが、もうリビングに通じる引き戸まで来たからなのか、とりあえず二人だけの会話というのは、そこでストップになったらしい。
そして雄介はその引き戸を開けた早々に、
「おはよう!」
といつもと変わらない様子でリビングへと入って行くのだ。
そこに何でか安堵する俺。 もしかしたら自分が心配している事なんて嘘なんかじゃないか? って思う位なのだから。
そう俺が思っていたら、急に和也が、
「な、雄介……本当に体の方は大丈夫なのか?」
その和也の言葉に俺の方も目を丸くしながら、俺は和也の方に視線を送る。
それに和也の方は気付いてくれたらしく、両手で俺の事を抑えるジェスチャーをして来るのだ。 そこを不思議に思いながらも、後は和也に任せるしかないと思った俺は、その会話の続きを待っていた。
「へ? 全然、俺の方は大丈夫なんやけどなぁ?」
そう言い、雄介は何でか自分の体をベタベタと触っている風だ。
「何でなん?」
「なんか、望がな……雄介の様子がおかしいって言ってたからさぁ」
「んー、まぁ、昨日の夜な、頭痛くなってもうたから、望に心配かけてもうたしな」
昨日の事を思い出しているのか、雄介は視線を天井に向けて話始める。
「へ? 頭が痛くなった?!」
何でか、そこに反応を示す和也。
もしかしたらさっき和也に雄介の事で相談している時に、その事については言ってなかった事なのかもしれない。
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