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ー至福ー110

「あ、ああ……まぁ……?」  最初に「あ……」と言ってしまった事に雄介の心の中で「まずい……」と思ってしまっているのかもしれない。 しかも終わりの方は首までも傾げてしまっていたのだから。 「確かに、それだと、望が心配するっていう訳だ。 で、まだ、頭の方は痛いのか?」 「流石に今はもう大丈夫やって……。 昨日、望に俺が頭が痛いって言うた時に、直ぐに薬持って来て貰ったかんなぁ」  雄介はそう言いながら、いつもの椅子へと座るのだ。 そして俺の方も椅子へと腰を下ろす。 「とりあえず、薬は効いてるっていう訳だ」 「ま、確かにな……」 「でも、ホント、雄介にしては珍しいよなぁ? 頭が痛くなるなんてさ」  をの台詞、俺が昨日言った。 と思いながら俺は頭を頷かせる。  それに和也は気付いたのか、 「望だって、そう思ってくれてるみたいだな」  そこで和也は俺の方に視線を向けて、 「でもさ、この前、病院に行った時に、雄介の方は何も異常はなかったんだろ?」  それをいきなり振られて、返事に遅れる俺。 「……ああ、確かに、俺も見た限りでは異常はなかったんだけどな」 「……だよなぁ?」  そこで和也は腕を組んで考えてしまっている。 でも和也までもがそこまでして考えてくれる必要とかってあるのであろうか。 いや和也だって雄介の事を心配してくれているとも取れるのだから、それはそれでいいのかもしれない。 「もしかして、見えないような所に異常があったとか?!」  半分以上ふざけて言っているような和也。  確かに和也の言う通り、見えてない所に異常があったのかもしれない。 いやMRIで見落としなんてあるのであろうか。 それに新城と俺とそして雄介をもその結果を見ているのだから、三人が三人見落とししている訳がないだろう。 脳には本当に異常はなかった筈だ。 「いやぁー、流石に三人でそのMRIの結果を見ているんだから、医者三人で見て、異常を見落とす訳がねぇだろ?」 「あ、ま、確かに、そうだよなぁー? ま、一人で診断した訳じゃねぇんだから、流石に見落としみたいなのはないんだもんなぁ? じゃ、昨日、雄介が頭が痛いと言った原因はなんなんだろ?」  そこで俺は目を見開く。 そう言われてみればそうだ。 昨日のは慌ててたから雄介に頭痛薬を渡した俺だったのだけど、確かにそう和也に言われて冷静になってみると、雄介の頭が痛くなってしまった原因みたいなのは一体なんなのであろうか。  これがもし度々頭を痛くしてて、偏頭痛持ちの人とか、気圧によって頭痛を起こす人とかという頻繁に頭痛を起こしてしまっている人なら、然程気になる事ではないのだけど、本当に一年に一回とかしか無い人なら気になる所なのかもしれない。

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