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ー至福ー111
「大丈夫やって! そりゃ、人間なんやから、たまには頭痛の一つや二つあるもんやろ?」
確かにそう言われてしまえばおしまいなのだけど。 だけどやっぱりまだ気になる所だ。
「あ、まぁな……」
俺はとりあえずそう答えておいて、頭の中ではこの前病院に行った時、雄介のMRIの検査した写真を思い浮かべてみる。
今の俺というのは箸の動きを止めて、完全に視線を天井へと向けてしまっていたようで、完全に動きを止めてしまっていたのか、
「お前、何考えてんの?」
という俺からして斜め前に座っている和也が覗き込むようにして言ってくる。
「え? あ、いやぁ……大丈夫だ、何でもねぇから」
「本当にか? だって、今完全に動きが止まってたぜ」
「あ、まぁ……とりあえず隠すような事じゃねぇから言うけど、ただ単にこの前病院に行った時の雄介のMRI画像を思い出していただけだよ。 今また頭に浮かべてみたけど、やっぱ、異常はなかったと思うんだよなぁ」
「そうなんだよなぁ……ま、いいんじゃねぇ? とりあえず雄介が大丈夫だって言ってるんだからさ。 とりあえず、今日は何する? っていう感じだけどな」
確かにそうだ。 昨日は土曜日で今日は日曜日。 本当に俺達っていうのは暇な方が苦手だ。 でも実は暇っていう訳ではない。 もし急患があれば対応しなきゃならないのだから、一応常に待機状態なのだから。 そこで俺は思い出したのか、
「ところで、和也達の方は決着付いたのか?」
とさりげなくそんな事を聞いてしまっていた。
その時にはもう既に食事を終えていて、テーブルでまったりとしていた俺達。
「え? あ、まぁな……。 そりゃ、もう……」
「和也も本当に僕の事を真剣に考えてくれているので、僕の方も安心しました。 だけど、僕達の方は子供の事、考えてませんよ」
和也のそこ言葉の後に付いて来たのは裕実だ。 そこは二人で話し合ったのだからいいのであろう。
「え? 子供はいらねぇのか?」
「お前にそう突っ込まれるとは思ってなかったかもー! とりあえず、俺達には必要ないかな? って思ってな。 そりゃ、望からしてみたら子供は必要なのかもしれねぇよ……だって、この診療所の跡継ぎが必要になるんだしな。 だけど俺達には必要あるのかな? って思ってさ……」
「あー、でも、なんか自分達の子供って欲しくないもんなのか?」
「いやぁー、別に……」
「でもさ、もし後継ぎの事を考えてくれてるんなら、和也達の方も居るんじゃねぇのかな?」
「あ……」
と和也達もそこに気付いてくれたようだ。
そう確かに俺と雄介の間には後継ぎが欲しいから子供が欲しいとなっているのもあるのだけど、やっぱり雄介が本当に望んでいるから欲しいっていうのもある。
でも、後継ぎの為に子供を産む訳ではないのかもしれない。 やっぱり子供は望んで産まれるものなのだから。
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