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ー至福ー133

「あ! そこもだったんやな。 ホンマ、俺っていうのは何も考えてなかったような気がするわぁ……。 せやから、俺は姉貴に怒られとったんやなぁ? そりゃ、怒られてもしゃーないようなもんやしな。 ほんなら、そこも、姉貴が働けない間っていうのは、俺が保証するっていうのは、どうなんやろ?」 「そこもなぁ、雄介のお姉さんなら、きっと、保証はして欲しくないと思うぜ。 寧ろ、ああいう性格の人だからな。 なんていうの? 自分でどうにかしたいタイプって感じがするしな」 「確かに、そうなのかもしれへんなぁー。 やっぱ、代理出産って、難しい問題やったんやなぁ……。 ホンマ、姉貴も言っておったけど、この問題、簡単じゃなかったって事なんやろなぁ」  そこで雄介は盛大に息を吐くと、また頭を抱えてしまう。  確かに世間的には同性婚も子供も可能にはなった。 だが、雄介みたいに心が繊細な人間には、簡単な問題では無いようだ。 いや俺だって、そこは本当に悩む所なのだから、世間的にも同性婚について悩んでいるカップルは沢山いるという事だろう。  また、そこで行き詰まってしまった俺達。  この二日、一応、診療所は休みにはしていたのだけど、同性婚そして代理出産の事でこんなにも悩むとは思ってなかった事だ。  確かに俺等には休みの日の時間潰しというのは苦手だったけど、今は話し合いとかも沢山あって充実しているのかもしれない。  春坂に居た時は、和也達とは別々に住んでいたのだから、俺と雄介が喧嘩した時以外はこうやって四人で話し合う機会っていうのは少なかったのだけど、この島に来て、一緒に住むようになってからは、本当に話をしているような気がする。 そして人によって色々な意見が出るのだから、同じ考えもあれば違う考えもあるという訳だろう。 「なら、やっぱり、俺達は子供を諦めるか、養子しかないんじゃねぇのか?」  俺の方ももうこの問題に対して、これしか選択肢が無くなってしまったのだから、半分諦めたような感じで言うしかなかった。 「ホンマに望はそれでええんか?」  そう雄介は真剣な眼差しで覗き込んで来る。  いや俺だって雄介との子供は諦めたくはない。 だけど、同性婚にしたってまだ始まったばかりの制度なんだから、国だってまだまだ手探りの状態なのであろう。  多分、俺達以外の本当に何も障害が無く婚姻届を出せる同性のカップルは直ぐにでも婚姻届や養子の申請をしているかもしれないけど、俺等みたいに問題がある同性カップルというのは沢山いるのであろう。 流石に俺等と同じような問題は無くとも、同性同士の結婚を反対する身内とかもいるだから。  そんな真剣な瞳で雄介に見られたら、俺の方は動揺が隠せないのか、瞳を完全に宙へと浮かばせてしまっていた。

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