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ー至福ー137

『本当に、赤ちゃんに、もしもなんかあった時も、本当に雄ちゃん達には考えて欲しい訳なんだけどな……。 勿論、私の事も考えて欲しいと思ってるのだけど……。 だってね、私の方だって自分の生活もあるけど、やっぱり、もしも私に何かあった時に、琉斗の事も雄ちゃん達には考えて欲しい訳……今、琉斗は中学生だけど、まだ、全然親から手が離れられる年ではないし、何かあった時に責任を取る事になるのは親なんだしね。 そういう事だから、もうちょっときちんと二人には代理出産について考えて欲しいわぁ』  本当に美里のおかげで女性にとって出産っていうのは、どんなに大変な事なんだっていう事が分かったような気がする。 だからなのか俺の方も納得したし、雄介の方だって、実のお姉さんなのに、真剣な瞳で真剣に美里の言葉を聞いて、頷いていたのだから。  でも、まさかここまで出産について真面目な話だとは男の俺達には知らなかった事なのかもしれない。 きっとこれがどちらかが産婦人科医をやっていたのなら男でも出産について本当に大変だっていう事を知っていたのかもしれないのだが、俺なんか特にあまり触れて来なかった所なのだから知らなかったという事だ。 もしかしたら雄介の場合のは、まだ研修医として産婦人科にも居たのだから記憶に新しいのかもしれないのだけど。 それでも美里が真剣に言う程までにはなってなかったんだと思う。  しかし産婦人科もそうなのだけど医者という仕事をしている以上、その人の人生を扱っているのだから、もっともっと出産について雄介とは真剣に話あった方がいいのかもしれない。 それに美里の言う通り、もしも美里に何かあった時、本当に俺達というのは何をして上げたらいいのか? そして琉斗の事についてだってそうだ。  美里はシングルマザーとして今まで琉斗を女で一人で中学生まで育てて来たのだから、せめて成人になるまでは親としては見届けたいだろう。 それで俺達の我儘で美里を犠牲にしてしまい二人の間にそんな悲しい事があってしまったら、俺達っていうのは、どう責任を取ったらいいのか? なんて事は分からない。 それにとりあえず俺の方は心のダメージとかは大丈夫だとしても、雄介の方の心のダメージっていうのは計り知れないだろう。  本当に本当に美里に言われてなかったら、今の今まで出産に関してそこまでリスクがあるなんて事、知らなかったのかもしれない。  逆に言えば、雄介のお姉さんである美里に頼んでみて良かったのかもしれないという事だ。 もし本当に身内の人間ではなく知らない女性頼んでいたら、俺達だってここまで真剣になって悩まなかったのだから。  そしてもしかしたらその人の人生を滅茶苦茶にしていたのかもしれないだろう。

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