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ー至福ー138
「ああ、分かった……。 ホンマに俺達の方も代理出産について望と今一度真剣に考えてみるわぁ。 ほな、姉貴今日もありがとうな」
そう言って雄介は笑顔で電話を切る。
いつもだったら、美里との電話はめんどくさそうにしている雄介なのだけど、今回は特に代理出産についての話を自分から電話をしたという事なのだから、ちゃんと最後まで真剣にめんどくさがらずに聞いていたのかもしれない。
だが電話を切った後に雄介は大きなため息を吐く、きっと少しは美里話をしていて疲れてしまっていたという事だろう。
「ま、そういう事やんなぁ……。 今、姉貴と話をしていて、まだまだ、俺達の考えっていうのは甘かったって事になるんやろなぁー」
と半分諦めというのか、ため息というのか、そんな感じで呟く雄介。
「でもさ、ホント、美里さんの言う通りじゃね? 俺達、男には分からない事をズバズバと言ってくれるのは美里さん位なんだしさ」
そこは笑顔で言う俺。
そうだ。 俺の方は逆に美里の言葉を聞いて納得したというのか、満足したというのか、まさにそんな感じだったのだから雄介との会話では笑顔になれたという事だ。
「それに、女性にとって出産がどれだけ大変なのか。 っていうもも分かったしな。 代理出産って、夫婦間で子供を作るのとは違うんだよ。 俺達の仕事と一緒で、人の命を預かって貰っている。 っていう状態なんだからさ、やっぱ、もっと真剣に話し合うって事が重要なんだよ」
その俺の言葉に、それぞれ目をパチクリとさせていたのだけど、俺の方はもう動揺しないというのか、俺としては美里が言いたい事を理解したからこそ納得しているというのか、そこのところは気にしないという事だ。
「ま、そうだよな……」
と先に口を開いたのは和也だ。
「俺の方も今の美里さんの言葉が分かったような気がする。 本当に女性にとって出産っていうのが、どれだけ大変な事なのか? っていうのが分かったような気がするからなぁ。 確かに、俺と裕実の場合には、全くもって代理出産の方は考えてなかったけど、もし、俺達の方もその代理出産で子供を望んでいたとしたら、望達以上に悩んでいた事なのかもしれないよなぁ? いや、今、美里さんにその事について聞いたばかりなのだから、逆に頼んだ女性を犠牲にしていたのかもしれない。 という事なんだからさ」
「そういう事だな。 俺達、男からしてみたら一生、出産について理解出来なかった所だったけど、美里さんのおかげで、出産っていうのは大変だっていう事を理解する事が出来たっていう所かな?」
本当に俺の方は美里のおかげで今回の事については理解出来た。 だが雄介の方は理解出来てないのか、それともまだ何か考え中なのか、美里と電話を切ってからは黙ったままだ。
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