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ー至福ー165

 そして次の朝からというのは、再び俺達からしてみたら仕事が始まる日だ。  雄介が朝ご飯を作っていると和也達も起きて来たようで、和也はいつものように元気な声で挨拶をして来る。 「おはよー!」  そう欠伸しながらリビングへと入って来る和也。  本当、いつもと変わらない朝のような気がする。  そして和也は珍しく朝から俺が座っているリビングテーブルの椅子に座り、新聞を読んでいる真正面から、 「な、望……昨日、夜何処に行ってたんだよー」  その和也からの質問に俺の方は吹きそうになっていた。  そうその今の和也の言葉に、俺の方は昨日の夜の自分の行動を思い出してしまったからであろう。  俺の方は新聞で顔を隠しながらも瞳は天井の方へと向け、 「え? 別に……」  そう誤魔化したつもりだったのだけど、 「だって、わざわざ下の階にあるトイレにまで行ってたんじゃなかったのか? ただ単純に腹壊してたっていうだけじゃねぇよなぁ?」 「腹壊してた。 っていうだけだけどなぁ……」  そう最後の方は自信無さげに小さな声で答えていると、和也の方はそれに気付かない訳がないだろう。 「……自信無さげに答えてるって事は……腹痛じゃない? って事はさぁ、一人でシたくなったのか?」  その質問に本当に俺の方は吹き出してしまいそうになっていた。  本当に和也という人間は全くもってそういう話をオブラートに包まな過ぎだからだ。  俺の方はそんな和也の言葉に持っている新聞を強く握りながら、 「ただ単純に腹が痛かったんだから、トイレに籠ってただけなんだよー」  今度は気持ち的に強く言ってしまっていた。  そんなところだって和也の方は逃さないように思える。 「逆にそんなに強く言うって事は、本当は腹痛じゃなかったって事だよな?」  本当に何も俺の事を分かってない和也に段々と俺の方はイライラとして来ていた。 だが雄介が朝ご飯をテーブルへと運んで来て、 「昨日の望はただ単に腹痛やったみたいやで……なんか変なもん望に食わせたかな? って思ったけどな。 ま、もしかしたら、今は夏やし、やっぱ、ちょっとした食中毒っていうのも考えられるしな。 食中毒ってな、キチンと食器が洗われてなかったりすると、それだけでも菌っていうのは繁殖しやすいしな。 特に夏っていうのは暑いもんやから、冬よりも夏の方が菌っていうのは繁殖しやすいし……それに、例え俺等は大丈夫だったとしても、人によって体の内部の働きっていうのは違うのやから、俺等の方は全然大丈夫でも、少し体の内部が弱い人だとお腹が痛くなるのが早かったり、もしかすると俺等の方は全く平気だったりするしな」  その雄介の説明に俺の方は雄介の事を見上げながら口を開けてしまう。  まさか雄介がそこまで説明してくれるとは思ってなかったからなのかもしれない。

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