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ー至福ー181
「え? あ、だってさ、俺だって、両親共に家に居なかったんだから、そりゃ、そうだったっていうのか……まぁ、俺の場合には、料理に時間を取ってる暇っていうのはなかったから、学校の帰りにどっかで飯買って食べてたけどさ。 和也だって、そこそこご飯作れるみたいだったから、俺とは違って自分でご飯作ってたのかな? って思っただけだからさ」
「あ、そういう事な……」
そう納得してくれる雄介。 そこにホッとする。
だって俺がそう述べた事に関して雄介の場合、何も突っ込んで来なかったからだ。
雄介の性格っていうのは割と純粋というのか、俺の言葉を信じてくれるというのか、俺の言葉にはそんなに突っ込んだ話をしなくなったようにも思えるからだ。
「ま、俺の場合には、多少なりとも飯を作って来たからなぁ。 作れない事はないっていうのかな? でも、今日のオムライスっていうのは、美味いだろー?」
そんな風に言う和也。 確かにそこは和也らしいのだけど、何でか和也には素直に褒められない俺がいる。 逆にため息が出そうになる位だ。
だけどこうも人によって態度が変わってしまうのはどうしてなんだろうか。
冗談を言って笑える人と笑えない人といる訳だし、冗談を言っていていじりたくなる人もいる訳だし、可愛いと思える人もいるのだから。
その中で和也の場合には、何も言えなくなってしまうのは何でなんだろうか。 今の俺だったら、雄介に対して素直に褒める事が出来るのであろうが何でか和也にはそう簡単に褒める事というのは出来ないような気がする。
「ちょっとー! 和也! いい加減にして下さいよー。 望さんが困ってしまっているじゃないですかー!」
そう頬を膨らませてまで和也に注意するのは、裕実だ。
本当にこの二人のやりとりっていうのは面白い。 見てるこっちが微笑ましくなって来るくらいなのだから。
裕実と和也が恋人同士になったのは、春坂で大地震が発生して親父がアメリカから帰国して来た時に、アメリカから何人か日本へと連れて来た医師と看護師の中に居た一人だ。
あの時、親父が連れて帰って来たのは、アメリカに一緒に行っていた朔望と歩夢、そして裕実と新城だった。
朔望はあの時一緒に親父達と帰国していたのかもしれないけど、怪我していたとか日本の医師免許を取ってからだったのかっていうのは分からないが、歩夢の方が俺との出会いっていうのは早かった。 そうだ。 歩夢の場合には日本での学校の手続きやら引越しやらで忙しくて、それがやっと落ち着いた頃に親父が紹介してくれた事を思い出す。 そうそれで最初に出会ったのは裕実だ。
最初出会った時っていうのは、本当にドジばかりで、不安になったのだけど、和也に好意を抱いていて自分の方へと振り向かせる為にやっていた。 と言っていて、和也と恋人になってからの裕実というのは、本当に和也並に仕事が出来る人物だった。 流石は親父がアメリカから連れて来たっていうだけはある。
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