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ー至福ー185

 もう俺の方も雄介とは喧嘩したくない。  いや雄介とはきっと一番最初に喧嘩した以来、本格的な喧嘩というのはした事がないのかもしれない。 寧ろ俺的には雄介との喧嘩というのは意見の言い合いなのだから。  確かに俺の方は雄介との喧嘩というのは意見言い合いとなっているのかもしれないのだけど、実際雄介の方はそう思っているかどうかっていうのは分からない所だ。 それに人それぞれに意見というのがあるのだから。  しかし雄介と初めて喧嘩した時だって、あれも喧嘩というのかこう言い合いの喧嘩ではなくすれ違いでの喧嘩だったようにも思える。  雄介が俺の事を初めて後ろから抱き締めてくれた時に、俺の方はたった一言「離せよ」と言ってしまった事で俺の方は雄介の事を傷付けてしまっていたのだから。  それで雄介の方はその俺の一言で勘違いしてしまい、俺から雄介に「別れたい」という風に取ってしまったらしい。  本当に言葉っていうのは難しい。  確かに俺という人間は話し下手だ。 それは多分小さい頃、小学校や中学校や学生だった頃から、ずっと一人でいたからであろう。 小中高学校の時には特にだ。  学校が終わると真っ直ぐに帰って来て、夜の十一時位まで毎日のように勉強漬けだったのだから、本当に人と触れ合う事は会話をする事だってしていなかった俺。 だからこう人の気持ちになって会話とかっていうのが苦手なのであろう。 だからさっき和也の地雷みたいなのを踏んでしまっていたのかもしれない。  幼少の頃から、俺からしてみたら勉強漬けというのが当たり前だったのだから、今はこう完全なコミュニュケーション不足として出てしまっている可能性はある。  そこで俺の方は気になった事を雄介に聞いて見る事にした。 「な、雄介って、小さい頃から親と一緒だったんだろ? 親と毎日のように会話ってしてたもんなのか? 寧ろ、友達と遊んだりしてたもんなのか?」 「……へ?」  急に振られて顔を天井へと向ける雄介。 「あ、そやなぁー。 ま、俺の場合には毎日のように遊んでおったで……」  そう悪ぶれる事もなく全くのいつもの笑顔でそう答える雄介。 「はぁ!? それって、どういう事だ?」 「ん、まぁ……そのまんまなんやけど。 もっと、詳しく話すとなぁ……宿題もせずに毎日のように友達と俺は遊んでおったわぁ。 ほんで、秘密基地作ったり、探検したりして夜遅くまで遊んでおって、よくお袋に怒られてたなぁ」 「そうだったのか!? 全く勉強しないで、よく高校とかに入れたんだなぁー」  そこは羨ましいという表情をしながら雄介の事を見上げる。 「いや、流石に受験の年には塾とか行っておったけど、そん年だけやろ? こう真剣に勉強したっていうのはな」  その雄介の言葉に俺の方は再び目を丸くする。  俺の方は小学校いや本当に小学校に入る前から毎日のように勉強に明け暮れていたのだから、何年何十年と毎日のように勉強して来たのに、雄介の方はたった一年塾に入っただけだっていうのに勉強が出来てたのだから凄いと思ってしまう。

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