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ー至福ー186

 いや、逆に俺の方が勉強のし過ぎだったのかもしれない。  普通の小学生や中学生というのは、宿題位はやると思うのだが、俺の場合には宿題とプラスして自主勉強そして塾にも通ってたのだから。 確かに普通の子供に比べたら勉強のし過ぎだったのかもしれないけど、やはりそこは親が医者だったから、自分も医者にならないといけないというプレッシャーがあったからなのかもしれない。 そしてもしかしたら俺の場合には親に褒められたいっていう所もあったから余計に勉強にやたら集中していたという事だ。  本当に普通の家庭と俺みたいな親の後を継がなきゃ行けない家庭では、こうもプレッシャーみたいなのが違うという事だろう。 そうそれに雄介の場合には心にも余裕があるからこそ人にも優しく出来る性格になったのかもしれないのだから。  人間って、人それぞれに人生に運命っていうのはあるのだけど、雄介と俺だけでもこんなにも違いというのがあるのが分かったような気がする。  俺がそんな風に考え事をしていると、リビングに通じる引き戸が開けられ、和也が、 「俺達の方は、もう、お風呂から上がったから、次いいぞー」  そう笑顔で伝えに来てくれる。 「ああ、ほな、次は俺達の番な」  そう雄介の方も俺の方に向かって笑顔を向けて来てくれるのだ。  そういやさっき俺は和也に何かこう地雷の言葉を言ってしまったように思えるのだが、今の和也は全くもってそんな素振りを見せてなかったようにも思える。  きっと裕実がお風呂で和也にフォローしてくれたのであろう。  だから今日は珍しく裕実が和也の事をお風呂へと誘ってくれたのかもしれない。  そして俺達の方もお風呂場へと向かう。  しかし俺の方も雄介と一緒にお風呂に入るのは久しぶりなことだ。 最近はずっと裕実と入っていたのだから。  俺は二階の自分達の部屋へと一旦向かってパジャマを手にすると、お風呂場へと向かう。 当然、雄介だって一旦二階へと来て部屋着を手にする。  そう俺は寝る時っていうのはパジャマ姿で寝るのだが、雄介はTシャツに短パン姿で寝るのだ。  パジャマっていうのは、人間がゆっくりと寝れる為に作られているのだから、パジャマの方が寝る時にはいいような気がするのだが、雄介の場合にはTシャツ姿に短パンだった。  俺の方は急に思い付いた事だったから、それを雄介に問うてみる。 「なぁ、雄介って、何で、寝る時パジャマじゃなくて、洋服で寝るんだ?」 「へ? これか? まぁ、Tシャツに短パンやったら、部屋着としてもいられるし、それに、もしもっていう時にはこのままで出る事が出来るやろ?」 「へ?」  そこまでの説明で俺の方はまだ意味が分らないでいたのか、首を傾げてまで雄介の事を見上げてしまっていた。

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