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ー至福ー189

「あ、ああ……まぁ、そういう事だよなぁ。 それに、実際和也達と離れてみないと分からない事だろうしな。 もしかしたら、案外寂しくはないのかもしれないし……」 「え? あ、ま、そうなのかもしれへんよな? それに、なんていうんか? ある意味、俺達からしてみたら究極の選択みたいな感じなのかもしれへんよな? 親友を取るか? 自分達の夢を取るか?」  その雄介の言葉で何だか俺の方が一瞬凍りついたようにも思える。  確かに今の俺達に迫られているのは、雄介の言う通り、『友情を取るか? 夢を取るか?』なのだから。  本当に俺達人間っていうのは、宇宙とかに比べたら本当にほんの一瞬人生かもしれないのだけど、本当に中身が濃い人生を送っているような気がする。  ほんの一瞬を生きる。 ほんの一瞬の出来事で悩む。 ほんの一瞬で笑える。  確かに俺は昔平凡な人生に飽き始めていたような気がするけど、本来なら人間っていう生き物は、生きているうちでこんなにも悩む生き物なんだっていう事が分かったような気がする。 そして喜怒哀楽が激しいという事もだ。  和也といる時も確かに喜怒哀楽というのは激しかったようにも思えるのだけど、今は雄介といる方が喜怒哀楽が激しいようにも思えるからだ。  でも逆に言えば、そんな人生の方が、生きている! っていう感じがするのは気のせいであろうか。  そんな事を俺は思ってしまったからであろう。 「な、雄介! 俺達って、生きてる! っていう感じがするよな?」 「へ? あ……」  唐突な俺の言葉に、流石の雄介も戸惑ってしまっているようにも思える。 でも、そういう時の表情って俺だけの特権みたいな感じに思えるのは気のせいであろうか。  そんな雄介に俺はクスクスとなってしまっていた。  こう焦ったような困ったような表情。 本当にそんなに滅多な事では見せてくれないような表情に益々クスクスとしたくなって来る。  確かに人生の中で喜怒哀楽っていうのはいつもついてくるもんだけど、本当に雄介の場合は純粋に喜怒哀楽を見せてくれているような気がするのだ。 そんな雄介の事を俺は好きになって良かったと思えている位なのだから。 「え? あ、まぁ、せやね……ホンマ、生きてる! って感じがするわぁ……」  そう答えながら笑顔を見せてくれる雄介。 本当に雄介の笑顔っていうのは素敵だ。  きっと雄介は純粋に作っている笑顔だからこそ、嘘偽りもない笑顔だからこそ本物の笑顔だから素敵な笑顔なのであろう。 「なんか、ホント、俺、雄介の事が好きになって良かったかも……」  そう自らあまり言わないような言葉を今日の俺っていうのは機嫌が良かったからなのか、さらりと言ってしまっていた。  また雄介が目を丸くしてまで俺の事を見ている姿が入って来る。  しかも今日は特にお酒等入ってないのだから、その分、俺は雄介に本当の事を伝えられているような気がする。

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