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ー至福ー193
「それにな、望のその可愛い声とかって、他の奴にはもう見せたくないしな。 それに、俺等っていうのは結婚すんねんから、ホンマに望の体っていうのは他の奴には見せたくないしなぁ」
本当に雄介っていうのは、俺の心臓をこう何回もドキリとさせてくれるような気がする。
確かにそうだ。 もう俺達っていうのは、結婚をする。 と決めたのだから、他人ではなくなるという事で家族になるのだから、確かに、こう恋人とのとは違う関係だと俺も思うのだから。
そう雄介が決意しているのだったら、俺の方も今日は我慢したいところだ。 だけど俺の場合には、寧ろ今の年から性欲っていうのは強くなってきたようにも思える。 ついこの間も一人でヤってしまっていた位なのだから。
「あ、ああ……そうだな……確かに、今は和也達が居るからな」
と俺の方は笑顔でありながらも暗い声で答えてしまっていたようで、そんな俺に雄介が気付かない訳がないだろう。
そんな俺に雄介覗き込むように見てくる。
そんな事をされたら俺の心の中を完全に雄介に読まれてしまいそうだ。
その間、シャワーの水滴が床を叩きつける音が聞こえて来る。 今まで会話をしていて気付いてなかった事なのだが、俺達がお風呂場にいる間、この音はしていたのであろう。 だけど静かになるまで気付かなかったという事になる。
その時間が何時間にでも感じられている俺。 そして胸の鼓動もさっきから早く鳴りっぱなしだ。
この胸の高鳴りが人生の中で何十回、何百回繰り返されて来ているのであろうか。 緊張でまともに雄介の事を見つめられなくなったようにも思える。 息の方も今にも思いっきり吐きたくなる衝動だ。
「そういやなぁ……」
雄介は急に立ち上がり、天井の方へと視線を向けて、
「そういや、ここん所、あんま望シてなかったようにも思えるわぁ。 だけど、ここで、シよ。 って俺が言ってもうたら、きっと望は身構えてしまうやろうし……ま、そこは……それに、ここやと和也達に声聞かれてまう可能性があるしなぁ」
「え? あ、そうだな……確かに、それは、あるのかもな……」
そう俺の方は答えるのだが、そうなると逆に何処でスるのであろうか。 何だか、俺からしてみたら、こう雄介にはぐらかされてしまっているようにも思える。
きっとまだ雄介の中で、俺の声を和也達には聞かされたくはない。 というのが引っかかってしまっているのであろう。
そこでとりあえず俺の方は思いっきり息を吐く。
ため息ではなく、自分の事を落ち着かせる為に息を吐いたのだ。
だけど案外性欲っていうのは、なかなか落ち着いてくれないもんだ。 しかも好きな人を目の前にしたら余計にだろう。
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